Research Press Release
患者の層別化が結核の治療法を改善するかもしれない
Nature Medicine
2018年11月6日
これまでに結核の治療を受けた患者3000人以上から得たデータの解析が行われ、結核患者の一部では治療期間を2か月程度短縮できる可能性が出てきた。
結核による死者は他のどんな感染症より多い。効果的な治療法は存在するものの、それは6か月間にわたる多剤併用療法であって、有害な副作用が生じる可能性もある。そのため、処方された療法に対する患者の服薬アドヒアランスが低くなりがちで、その結果として薬剤抵抗性が生じ、持続感染や感染拡大につながりかねない。アドヒアランスを高め、治癒率を改善するには、もっと毒性の低い薬を見つけるか、患者を判別し、それに合わせて既存の治療薬の投与期間を調整することが必要である。
R Savicたちは、既存の臨床試験データを解析し、塗抹検査で低グレードと判定された結核患者の場合、4か月の薬剤治療で6か月投与したのと同等な効果が得られることを明らかにした。これとは対照的に、治療計画に対するアドヒアランスの低さ、HIVの同時感染、および高グレードの結核感染は転帰不良に関連付けられ、このような場合には治療期間を長くする必要があるらしいことが示された。これらの知見を臨床に活用すれば、病気の治癒が早まり、結核という世界的負担も軽減できる可能性がある。
doi:10.1038/s41591-018-0224-2
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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