Research Press Release
【医学研究】皮膚移植のためにヒト成分のみからなる培養系を開発する
Nature Communications
2018年10月31日
ヒト成分のみを使用して移植用の皮膚組織を生成する細胞培養法の開発について報告する論文が、今週掲載される。今回開発された培養系が今後用いられれば、重度のやけどやその他の皮膚疾患の治療の安全性が向上する可能性のあることが示唆される。
近年、皮膚移植術が大きく進歩し、皮膚に重度の創傷や熱傷を負った患者の体表の90%まで復元できるようになった。こうした治療では、患者から採取された皮膚細胞を、実験室内で細胞培養によって増やして大きなパッチ状の皮膚組織を形成させる。こうすることで創傷部位に移植できるようになる。培養の際、この組織の成長を補助する目的でマウス由来の細胞が加えられることが多いが、こうしたヒトとマウスの細胞の混合物によって、患者は感染症や有害な免疫反応のリスクにさらされることになる。
今回、Karl Tryggvasonたちの研究グループは、ヒトの体内に常在するラミニンというタンパク質の2つの特定のバリアントが、マウス由来の細胞と同じように皮膚細胞の成長を補助することを見いだした。またTryggvasonたちは、この知見を基に、マウスの細胞を全く使わずヒト成分のみからなる(動物成分を含まない)、皮膚移植のための培養系を作り出した。Tryggvasonたちはさらに、この方法を用いて得た皮膚組織をマウスに移植して、良好な結果が得られることを実証した。
doi:10.1038/s41467-018-06934-3
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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