【動物学】ヌーが遠くまで移動できるのは効率的に働く筋肉のおかげ
Nature
2018年10月25日
Zoology: Economic muscles allow wildebeest to roam further
ヌーは、効率の良い筋繊維のおかげで、オーバーヒートを起こさずに長距離移動ができることを報告する論文が、今週掲載される。この新知見は、大型哺乳類の筋繊維のエネルギーを初めて直接測定した結果であり、砂漠環境に生息する動物が、降水量や食料、気候の季節変動と局地的変動にどのように対処しているかを示唆している。
動物の長距離移動能力は、移動中のエネルギー利用と熱産生量に依存している。大型動物は小型動物よりも効率よく陸上で長距離を移動するが、個々の筋繊維の効率についての研究は進んでいない。マウスの場合、エネルギーの3分の1が運動に変換され、残りの3分の2が熱として消費されることが知られている。生きた筋繊維を直接調べるのは、小型動物の場合であっても難しく、ウサギより大きな動物で調べられたことはない。
今回、Alan Wilsonたちの研究グループは、移動性のヌーの筋繊維の効率を調べた。Wilsonたちは、動作センサーと環境センサーの付いたGPS追跡首輪を用いて、ボツワナ北部の高温乾燥環境に生息するオグロヌー(Connochaetes taurinus)が、5日間水を飲まずに80キロメートル移動したことを明らかにした。オグロヌーの筋繊維は、エネルギーの3分の2を仕事量に変換し、熱として消費されたのは残りの3分の1のみであり、同じような大きさの動物(ウシなど)や小型動物(ウサギなど)よりも相当に効率が良いことが報告されている。このように、オグロヌーは筋肉の効率が良いため熱産生量が最小限に抑えられており、このことから、頻繁に息を吐いても失われる水分量が少なく、そのために水を飲む頻度が低いことが示唆される。
doi:10.1038/s41586-018-0602-4
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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