【神経変性】マウスの老化細胞を除去して認知機能低下を軽減する
Nature
2018年9月20日
マウスの老化細胞と神経変性との間に因果関係が認められたことを報告する論文が、今週掲載される。この新知見は、神経変性疾患の新しい治療法の開発に道を開く可能性がある。
老化細胞(分裂能を失った機能不全細胞)は、高齢になると全身に蓄積して組織の変性を積極的に推進することが、過去の研究から明らかになっている。こうした老化細胞を除去すれば、老化の数多くの影響に抵抗することが可能になる。また老化細胞は、老化した脳や神経変性疾患でも検出されているが、その役割は解明されていない。
今回、Darren Bakerたちの研究グループは、神経変性疾患のトランスジェニックマウスモデルを用いて、海馬などの脳領域における老化細胞の蓄積について報告している。老化細胞を遺伝的改変によってマウスの一生を通じて除去し続ける実験では、ニューロンにおけるタウタンパク質のリン酸化(およびその後の神経原繊維がもつれ合った塊の蓄積)が低下し、認知過程に関与する脳領域である皮質と海馬のニューロン変性が防止された。その結果、マウスの記憶力減退は、遺伝的改変を受けていないマウスと比べて軽度なものとなった。この結果から、老化細胞が神経変性と認知機能低下を促進することが示唆される。
以上の新知見は、マウスモデルにおいて神経変性疾患の発症前に老化細胞の除去を継続的に行うことが、疾患の進行に有意な影響を与える可能性のあることを実証している。この知見がヒトにもトランスレーションでき、臨床現場で使用できる可能性があるかを判断するには、さらなる研究が必要と思われる。
doi:10.1038/s41586-018-0543-y
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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