口蹄疫のワクチン接種でアフリカ東部の貧困を緩和できる可能性がある
Nature Ecology & Evolution
2018年8月7日
家畜に広がる口蹄疫系統の先行的な同定に基づくワクチン接種プログラムが、アフリカ東部の貧困の緩和に役立つ可能性があることを示唆する論文が、今週掲載される。
アフリカでは、口蹄疫による家畜生産の損失が、毎年約23億ドルに上ると推定されている。アフリカ南部では口蹄疫に対する大規模なワクチン接種戦略が実施されてきたが、現地の疫学的状況がほとんど明らかにされていないアフリカ東部では、防疫は極めてわずかである。
Tiziana LemboとRichard Reeveたちは今回、タンザニアの営農世帯を調査し、地元民の間では口蹄疫が重大な懸念材料であり、経済的に大きな負担となっていることを明らかにした。家畜の口蹄疫大流行による支出に苦しむ世帯は一般に、家族の健康にかける費用が約25%少なかった。
著者たちは、異なる系統の口蹄疫ウイルスに対する家畜の曝露歴を調べ、口蹄疫が特定のウイルス系統の緩やかな波となって、アフリカ東部全体に広がっていくことを見いだした。また、アフリカ南部とは異なり、家畜が野生のスイギュウから口蹄疫に感染することはまれであることも分かった。このことは、野生動物と家畜との分離戦略が奏功する可能性が低いことを示唆している。
著者たちは、現在広がっている系統の早期監視を先行的な系統特異的ワクチン接種と組み合わせることで、アフリカ東部における口蹄疫の経済的影響および衛生的影響はコスト効率よく軽減される可能性がある、と結論付けている。
doi:10.1038/s41559-018-0636-x
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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