【生態学】エディタヒョウモンモドキの波瀾万丈の進化史
Nature
2018年5月10日
米国ネバダ州の草原の土地利用パターンの変化に応じて、地元に生息するエディタヒョウモンモドキ(Euphydryas editha)の個体数が増加して減少し、再び増加したことを報告する論文が、今週掲載される。この研究では、人間活動によって、図らずも動物界で適応進化が起こってしまうことが示された。この関係は、人間活動によって変化した生息地の保全を計画する際に考慮に入れる必要がある。
25年前に発表されたMichael SingerとCamille Parmesanの論文では、米国ネバダ州カーソンシティに生息するエディタヒョウモンモドキの孤立個体群が、ウシの大規模放牧によって同地域に侵入した外来の植物種ヘラオオバコ(Plantago lanceolata)を好んで餌にし始めた過程について説明されていた。今回、同じ研究チームが発表した論文では、前回と同じエディタヒョウモンモドキの個体群が、在来種の食用植物Collinsia parvifloraを食べなくなってヘラオオバコに完全に依存するようになり、命に関わる進化的わな(evolutionary trap)ができあがったこと、そして、2005年の大規模放牧の終了によって、このわなが働いて、この地域のエディタヒョウモンモドキの個体群が大打撃を受け、絶滅したことが示されている。
今回の研究では、自然個体群の命取りとなり得る進化的わなが人間活動によって図らずも仕込まれることが明確に示されているが、この関係の動的な性質も論文に記述されている。なお、大規模放牧が終了した後、Collinsiaを餌にするエディタヒョウモンモドキが再び出現し、この地域に自然に再定住して、進化過程全体が再び始まる環境が整った。
doi:10.1038/s41586-018-0074-6
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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