【動物学】微小なエビの一種が団結して海洋の混合を生み出している
Nature
2018年4月19日
数センチメートル大のエビの一種が集団で鉛直方向に移動することで下向きのジェット流が生じ、それが海洋の混合に大きな影響を及ぼしている可能性があることを報告する論文が、今週掲載される。このサイズの生物は、気候的に重要な海洋域に大量に生息しているため、この影響が広範囲に及んでいる可能性がある。
オキアミのような数センチメートル大の動物プランクトンは、大量に生息しているが、個々で海洋の混合に明白な影響を与えるほど十分に大きな乱流を生み出すことはない。しかし、こうした動物プランクトンは、日常的に数百メートルに及ぶ鉛直的移動を行うため、長さ数十メートルの鉛直軸を有する高密度の凝集体を形成する。
今回、John Dabiriたちの研究グループは、ブラインシュリンプ(Artemia salina)をモデル生物に用いて、その集団的な鉛直移動が下向きジェット流を生成し、それが海洋の混合に大きな影響を及ぼす可能性のあることを明らかにした。Dabiriたちは、安定な層状の流体の入った2つのタンクにブラインシュリンプを入れて室内実験を行った。一方のタンクは、密度成層の非可逆的混合を測定することを目的とし、もう一方のタンクは、流れを可視化するいくつかの技術を実施することを目的としていた。弱い刺激を加えることでブラインシュリンプは泳ぎ始めた。Dabiriたちは、ブラインシュリンプが集団を形成して上向きに遊泳すると、大規模な下向きジェット流が生じ、それぞれの個体の後方に生じる水流によって渦が発生することを観察した。これは、密に成層した水中でも観察された。
以上の結果から、海洋小動物が、小さな体にもかかわらず、その行動によって海洋の物理的構造と生物地球化学的構造を大きく変化させることが例証された。
doi:10.1038/s41586-018-0044-z
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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