【気候科学】増えつつある海の熱波
Nature Communications
2018年4月11日
この100年間に海の熱波が長期化し、より頻繁に起こるようになったことを報告する論文が、今週掲載される。今回の研究では、1年間で海の熱波が生じる日数が、1925年から2016年の間に54%増加し、この傾向が1982年以降は加速していることが明らかになった。
海の熱波は、長期にわたって海面温度が異常に高くなる極端な気候事象であり、海洋生態系に悪影響を及ぼし、生態学的、経済的に大きな影響を生み出すことがある。海洋上層では、温暖化の継続が広範に観測されているが、極端な温度の傾向を全球スケールで調べる研究は行われていない。
今回、Eric Oliverたちの研究グループは、1900~2016年の海面温度の人工衛星観測データと現場観測データを分析し、1925~1954年と1987~2016年の各期間に海の熱波の頻度が全球平均で34%上昇し、熱波の継続期間が全球平均で17%長くなったことを明らかにした。Oliverたちは、その原因として、平均海洋温度の全球的上昇を挙げており、内部変動が地域レベルで一定の役割を果たしているが、長期的傾向には影響しないことも明らかにした。
Oliverたちは、海面温度の上昇が21世紀を通じて継続する可能性が高いことと、最近数十年間に加速傾向が観測されていることを考慮すれば、海の熱波が今後も全球的に増加を続け、海洋の生物多様性に影響を及ぼすことが予想されるという考えを示している。
doi:10.1038/s41467-018-03732-9
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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