Research Press Release
【神経科学】脳内の概日リズムによる視知覚の強化
Nature Communications
2018年4月11日
脳の感覚野の安静時活動が夜明けと夕暮れに変化することが視知覚の強化に関連していることを示した論文が、今週掲載される。
概日周期が生理的過程に与える影響については既に報告されているが、人間の知覚が時刻によって変化することの神経的基盤は解明されていない。今回Christian Kellたちは、14人の男性被験者の脳の機能的磁気共鳴画像法(fMRI)によるスキャンを、1日6回(午前8時から午後11時の間)、2日間にわたって実施した。Kellたちは、いわゆる安静時データ(被験者が課題を行っていない時に収集されたデータ)に加えて、視覚的検出課題を行っている被験者のデータを集めた。その結果、被験者の視覚的検出課題の成績が最もよかったのは朝(午前8時)と夜(午後8時)であることが明らかになり、視覚情報を処理する脳領域の安静時活動がこれらの時刻に低かったことが原因とされた。
Kellたちは、ヒトの脳が、その自然な活動を変化させて、夜明けと夕暮れの視覚信号の質の低下を補っているという考えを示している。夜明けと夕暮れでもモノがよく見える理由が、この予測的機構によって説明できる可能性がある。
doi:10.1038/s41467-018-03660-8
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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