Research Press Release

【惑星科学】木星深部の特性を調べる

Nature

2018年3月8日

巨大ガス惑星の1つである木星について、重力場、大気流、内部組成、極低気圧などの詳細な特性を報告する4編の論文が、今週掲載される。これらの論文には、NASAの木星探査機「ジュノー」のミッションによって得られた重要な知見の一部が紹介されている。木星の表面には、独特な暗い「縞」と明るい「帯」があり、これまで盛んに研究されてきたが、木星の深部の解明は進んでいない。

Luciano Iessたちの研究グループは、ジュノー探査機の移動に基づくドップラーデータを用いて、南北非対称であることが知られる木星の重力場を調べた。木星は、南北がつぶれた楕円形の流体惑星で、高速回転しているため、南北非対称性は予想外のことだったが、その原因が大気風と内部の風の流れであることをIessたちが明らかにした。また、別の2つの研究グループが、この風の流れの深度を評価した。Yohai Kaspiたちの研究グループは、木星の「奇数次」の重力モーメントを分析し、雲層から3000キロメートルの深さまでジェット流が吹いていることを明らかにした。加えてKaspiたちは、木星大気の乱流に木星の全質量の約1%が関係していることも報告している。一方、Tristan Guillotたちの研究グループは、「偶数次」の重力モーメントを分析して、雲層下3000キロメートルより深い木星の内部が水素とヘリウムの流体混合体でできており、剛体回転していることを明らかにした。

さらに、Alberto Adrianiたちの研究論文には、ジュノー探査機による木星の極域の包括的な可視光および赤外光の観測結果が報告されている。この観測によれば、木星の両極に存在することが知られるサイクロンによって形成された多角形パターンが持続しており、北極では、1個のポーラーサイクロンの周りに8個の周極サイクロンが回転し、南極では、1個のポーラーサイクロンの周りに5個の周極サイクロンが回転していた。しかし、周極サイクロンの起源とそれらが合体せずに存在し続けているプロセスについては解明されていない。

同時掲載されるJonathan FortneyのNews & Viewsには、木星と土星の内部ダイナミクスに関して一貫した物理像を構築できれば、この種の巨大ガス惑星の内部ダイナミクスの理解を深める上で重要な役割を果たすようになるという結論が示されている。

doi: 10.1038/nature25775 | 英語の原文
doi: 10.1038/nature25793 | 英語の原文
doi: 10.1038/nature25776 | 英語の原文

doi:10.1038/nature25491

「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。

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