乳がんゲノムの塩基配列解読で明らかになる乳がんの秘密
Nature Genetics
2017年10月24日
乳がんのリスクが高いこととの関連が認められた遺伝的バリアントについて説明する2編の論文が、NatureとNature Geneticsにそれぞれ掲載される。今回行われた全ゲノム関連解析は、数十万人分のデータを集めて行われたが、この解析結果からは、乳がんのスクリーニング検査と早期発見、治療法に改善が期待されている。
乳がんのリスクは、遺伝的影響を受けることが知られており、これまでに乳がんとの関連が認められた105のゲノム領域が同定されているが、乳がんリスクに対する遺伝的寄与のかなりの部分が明らかになっていない。今回、Douglas Eastonたちの研究グループは、新たな選択的遺伝子型判定アレイを用いて、乳がんを発症した女性とそれ以外の女性のゲノムを比較し、乳がんのリスクと関連するゲノム領域を新たに65領域同定した。これにより乳がん発症の家族性相対リスクの18%に関連するゲノム領域が同定された。この研究成果を報告するEastonたちの論文が、Natureに掲載される。
一方、Roger Milneたちの研究グループは、特定の種類の乳がんに着目し、エストロゲン受容体(ER)陰性腫瘍の患者とBRCA1感受性遺伝子の保有者と対照被験者のゲノムを比較した。その結果、ER陰性乳がんのリスクと関連する10か所の座位が新たに同定された。過去に報告された座位を考慮に入れると、ER陰性腫瘍の家族性リスクの16%が説明できることになった。また、Milneたちは、BRCA1遺伝子の変異を保有する者の乳がんリスクと一般集団におけるER陰性乳がんのリスクが強く関連していることを指摘している。以上の研究成果を報告する論文は、Nature Geneticsに掲載される。
doi:10.1038/nature24284
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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