Research Press Release

【エネルギー】水の自然蒸発から再生可能エネルギーを得る

Nature Communications

2017年9月27日

水の自然蒸発が新しい再生エネルギー源として有望なことを報告する論文が、今週掲載される。今回の研究では、水の蒸発という自然のプロセスから回収できるエネルギー量の評価が行われ、水の自然蒸発から風力の3倍の電力密度が得られる可能性のあることが明らかになった。

地球の表面で吸収される太陽エネルギーのほぼ半分が水の蒸発を引き起こし、これによって生態系と水資源、気象、気候が影響を受けている。蒸発エネルギーを仕事に変換できることは最近の複数の研究で実証されているが、蒸発エネルギー資源の利用可能性と信頼性、潜在力についての解明はほとんど進んでいない。

今回、Ozgur Sahinたちの研究グループは、水面上で水の蒸発からエネルギーを回収する蒸発駆動エンジンが水面からの水の蒸発速度にどのような影響を及ぼすのかを説明し、こうしたエネルギー回収装置の自然環境での性能を最適化する方法を予測するためのモデルを作成した。そしてSahinたちは、米国内に現存する面積0.1 km2以上の湖沼と貯水池(五大湖を除く)からの水蒸発によって最大325ギガワットの電力を利用できる可能性があり、これが米国の年間発電量(2015年)の69%以上に相当するという推定結果を明らかにした。また、今回の研究結果は、水の蒸発によって得られる電力が、風力と太陽光による電力に匹敵する一方で、気象条件の変化による悪影響はさほど大きく受けないことを示している。さらに、水蒸発技術は、蒸発による水の損失をほぼ半分に減らすことができ、特に水ストレスと水不足の時期を経験する地域では、こうしたエネルギー回収装置の方が有利かもしれない。

以上の研究結果は、水蒸発をエネルギーに変換する材料とデバイスの改良を後押しし、再生可能エネルギーの間欠性の問題に対処する方法につながる可能性がある。

doi:10.1038/s41467-017-00581-w

「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。

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