Research Press Release

ISのための精神、ISに立ち向かうための精神

Nature Human Behaviour

2017年9月5日

The will to fight for and against IS

IS(イスラム国)と対立する集団のために戦う兵士、またISの兵士自身は、「神聖な価値」を奉ずること、神聖な価値を優先して近親者との絶縁をいとわないこと、敵と比較して自身の属する集団の精神力の強さを疑わないことのために、自ら進んで戦場に赴いて命を捨てようとする。今週報告された知見からは、個人が戦場へ出ていく動機が何かということについての理解が得られそうである。

ISが2014年の夏にその勢力をイラク全土に大きく広げたとき、このテロ集団の戦場の拡大は多くの人を驚かせたが、それはイラクの軍隊が当初、戦意の弱い集団であると見なされていたためであった。ISの戦意の高さについて提案された理由の1つは、IS兵士が「熱烈な行為者(Devoted Actor)」として行動するためであるというものであった。つまり彼らは、譲ることのできない神聖な価値(物や金銭による補償との交換を拒絶する価値)を守ろうとする時に、自ら進んで大きな犠牲を払って過激な行為へと向かうという理由が考えられた。

Scott AtranとAngel Gomezたちの研究グループは今回、〈熱烈な行為者〉という枠組みが戦意の理解に使えることを示す新たな証拠を提示している。研究グループは、(1)イラク北部の前線の兵士たち(拘束されたIS兵士を含む)を対象に2015年2月~3月に実施された現地インタビュー、(2)ISと交戦中の56のクルド人民兵組織(ペシュメルガ)、イラクのクルド人武装組織、スンニ派アラブ人の軍事組織を対象に2016年2~3月に実施された定量的現地調査、(3)6000人以上のスペイン人を対象とした一連の大規模なオンライン調査を組み合わせて分析を行った。

その結果、コストの大きい犠牲(自らの命や近親者の幸福など)を進んで払う意志、神聖な価値の重視、自身が属する集団が敵より精神的に強いという認識の三者に共通する関係が見出された。研究グループは今回の調査は、(クルドの言語、歴史、土地への責任を感じる感覚である「クルド性」というような)抽象的な理念の尊重が戦意の説明となることを示唆しているものの、さらなる研究を要する同様に重要な疑問は、なぜ一部の集団は他の集団よりも抽象的な理念への忠誠度が高くなるのかということだと指摘している。

News & ViewsではJohn Horganが、「前線の兵士たちを対象とした研究が(研究グループの言うように)「難しい」というのは控え目な表現である。むしろ今回の研究をいっそう重要なものとしているのは、内容の濃い学際的な理論的枠組みが明らかにし、かつ問いかける、民族誌的で実験的なインタビューに基づく研究の複雑さにある」と述べている。

doi:10.1038/s41562-017-0193-3

「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。

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