【生態】本来の姿で残っている生態系が森林減少の影響を最も大きく受ける
Nature
2017年7月20日
森林伐採による生物多様性の減少は、既に破壊あるいは改変された生態系よりも手付かずの生態系の方が深刻だとする研究報告が、今週掲載される。このほど、世界中の手付かずの地形と人間が改変した地形での森林伐採が19,000以上の生物種の絶滅リスクに及ぼす影響を評価し、絶滅リスクが高いホットスポットを特定するための研究が行われ、これによって得られた新知見では、新たな絶滅の高まりを防ぐために手付かずの森林地形を保護するための新しい保全活動が必要なことが示唆されている。
人間が改変した地形で、生息域の利用可能性が既に低下しているものは、ほぼ手付かずの生態系よりも生物多様性減少のリスクが高いと考えられているが、分断された生態系の一部で予想外の回復力が見られる。今回、Matthew Bettsたちの研究グループは、保全活動を実施すべきなのは手付かずの生態系なのか分断された生態系なのかを突き止めるため、全世界の森林減少と19,432種の脊椎動物の絶滅リスクに関する大規模なデータセットを評価した。
予想された通り、動物種が絶滅危惧に陥る確率は森林伐採によって著しく高まった。しかし、このリスクは、既に分断されている地形よりも比較的手付かずの地形の方が不相応に高かった。例えば、森林伐採の1%増加による絶滅危惧に陥る確率の上昇は、高い森林被覆率(90%)の地域に生息する動物種の方が、平均的な森林被覆率(57%)の生息地にいる動物種より10%以上高かった。
Bettsたちは、生物多様性の減少リスクが特に高い地域の一部(例えば、ボルネオ島、アマゾン中部、コンゴ盆地)を特定し、現在のペースで森林が減少すると、これらの地域に生息する121~219種の脊椎動物(例えば、Mendolong bubble-nest frogとMentawi flying squirrel)が今後30年間で絶滅危惧種になってしまうと予測している。現在のところ正式に保護されているのは、これらの地域の17.9%に過ぎず、脆弱性が低いと考えられている地域で動物種の絶滅リスクが実際には高くなっていることが明確に示されたとBettsたちは結論づけている。
doi:10.1038/nature23285
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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