フェイクニュースや作り話が広まる理由
Nature Human Behaviour
2017年6月27日
人の注意力には限界があることと情報量の増大によって、フェイクニュースや作り話などの質の低い情報がソーシャルメディア上にあっという間に広まる現象を説明できるかもしれないとの報告が、今週のオンライン版に掲載される。フェイクニュースが急速に拡散する理由が分かれば、虚偽の情報の伝播を抑える新たなツールを開発する上で大いに役に立つ。
これまでの研究では、ソーシャルネットワークの構造と、人の注意力の有限性の組み合わせが、急速に伝播するミームが出現する十分条件であることが示されていた。情報の質が、どの情報が急激に伝播するかを決めるというのは当然のように思えるが、ソーシャルメディア上におけるフェイクニュースの誤った情報の伝播についてはそうではないことが示唆されている。
Diego Fregolente Mendes de Oliveiraたちの研究チームは、行動上の限界が、ソーシャルメディア・プラットフォームによる、情報の質の高低を識別する能力を低くすることを明らかにした。今回の研究では、ミーム(伝達されうる情報やアイデアの断片)の拡散モデルが開発され、情報負荷(単位時間あたりに受け取られるミームの平均数)ならびに個人の注意力がミームの質と相互作用してその注目度にどのように影響するかが調べられた。研究チームは、情報の質と多様性との間の良好なトレードオフが達成されるソーシャルメディア市場が理論的に可能なことを明らかにした。しかし、このモデルを、ツイッターやタンブラーからの情報負荷および注意に関する現実世界の測定値で較正したところ、情報はその質の高低を問わず同程度の速度で共有されることが分かった。
結論として研究チームは、ソーシャルメディアによる識別力を高め、誤った情報の伝播を防ぐ1つの方法として、ソーシャルメディアを質の低い情報で満たす「ボット」の使用を抑制することを提案している。
doi:10.1038/s41562-017-0132
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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