【保全】海洋保護区の有効性はスタッフの能力の高さにかかっている
Nature
2017年3月23日
スタッフの能力と予算能力が不十分な海洋保護区(MPA)は有効性が低いという研究結果についての報告が、今週掲載される。
2020年までに世界の沿岸域と海域の10%をMPA内で管理し、あるいは他の保全対策によって管理すべきことに193カ国が合意したのは2011年のことだった。MPAは、保全の目的で人間の活動が制限される区域をいう。しかし多くのMPAの有効性は明らかになっておらず、MPAが多くの場合にプラスの社会的成果と生態学的成果を実現していないことを示唆する証拠もある。
今回、David Gillたちは、433カ所のMPAの管理データと218カ所のMPAにおける魚類の個体群データに関する世界規模のデータベースを構築した。その結果、MPAの大半(魚類の個体群データが収集された218カ所のMPA の71%)が魚類の個体群にプラスの影響を及ぼしていることが判明したが、影響の大きさはMPAによって大きくばらついていた。また、Gillたちは、24カ国の62カ所のMPAの管理データと生態学的データを比較したところ、MPAによる保護に対する魚類の応答を説明する上で最も重要な要因がスタッフの能力であり、生態学的成果のばらつきの原因の19%に相当し、2番目に重要なのが予算能力であることが判明した。スタッフの能力が十分なMPAによる生態学的成果は、スタッフの能力が不十分なMPAの2.9倍に達していた。
Gillたちは、スタッフの能力と財源に対する投資が十分でないMPAが全世界で増加し続けると、保全成果が最適レベルを下回ることになる可能性が高いという考えを示している。
doi:10.1038/nature21708
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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