海洋最深部で化学物質に汚染された甲殻類を発見
Nature Ecology & Evolution
2017年2月14日
地球最深級の2つの海溝で極めて高レベルの汚染が見つかったという論文が、今週のオンライン版に掲載される。工業地帯から遠く離れ、互いにほぼ7000 kmも隔てられた深さ10 kmを超える海溝のそうした高レベルの汚染について、今回の研究成果は、地球表面の人為的な汚染が地球の最果てにまで届き得る証拠となることを示唆している。
Alan Jamiesonたちは、水深1万mに生息する端脚目甲殻類が、北西太平洋で有数の汚染された工業地帯である駿河湾に匹敵するレベルで汚染されていることを発見した。研究チームは、太平洋のマリアナ海溝とケルマデック海溝の最深部に生息する生物の試料を引き揚げるために、両海溝の水深の測定が可能な深海探査船を利用した。分析の結果、端脚類の脂肪組織には、絶縁油として一般的なポリ塩化ビフェニル(PCB)や、難燃剤として広く使用されるポリ臭化ジフェニルエーテル(PBDE)など、残留性有機汚染物質(POP)が極めて高レベルで発見された。
汚染物質は、海底へ沈降する汚染されたプラスチックデブリや動物遺骸片に乗って海溝へたどり着き、そこで端脚類に摂取された可能性が高いと研究チームは示唆している。
関連するNews & Views記事では、Katherine Daffornが次のように述べている。「Jamiesonたちは、深海が隔絶された場所ではなく、表層水と大いにつながっており、かなり高濃度の人工的汚染物質にさらされてきた、ということを明確に裏付ける証拠を示した」。
doi:10.1038/s41559-016-0051
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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