【進化】鳥のくちばしの多様性が進化する過程
Nature
2017年2月2日
2,000種以上の鳥類のくちばしの解析が行われ、くちばしの多様性の進化過程が明らかになったことを報告する論文が、今週掲載される。
小さな分類群の生物がその環境内で利用可能なニッチを活用できるように多様化する現象は、自然選択によって推進されていることがよく知られている。その進化速度は、最初は高く、この生物がニッチを占めるようになると減速する。ところが、これと同じような進化の減速が、より大きな分類学的スケールで観察されておらず、分類学上の綱全体について生態学的に重要な形質(例えば、鳥のくちばし)が多様化する過程は明らかになっていない。
今回、Gavin Thomasの研究チームは、このパラドックスに取り組むため、博物館所蔵の標本を用いて、現生鳥類の95%以上に相当する鳥類のくちばしの三次元スキャン画像を生成し、地球規模でくちばしの多様性を解析することを目的とした“Mark My Bird”という市民科学プロジェクトを立ち上げた。その結果分かったのは、くちばしの形状の多様性が現生鳥類の進化史の初期に急速に拡大し、その後は徐々に減速した一方で、進化速度が系統によって異なるという傾向は維持されていたことだった。Thomasたちは、今回の研究で得られた知見によって「大進化」の概念が裏付けられたと考えている。大進化では、生物の形質が、その生物の進化史の初期に多様化し、その生物が地球規模で拡大するにつれて微調整され、予測不可能な事象の発生によって新たな生態的機会が生じる。
同時掲載されるBhart-Anjan BhullarのNews & Views記事では、「おそらく、この論文に込められた最も強力なメッセージは、大規模な進化が歴史と大惨事の両方に依存するということなのだろう」と記されている。
doi:10.1038/nature21074
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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