【天文学】休止状態の大質量ブラックホールの解明へ一歩前進
Nature
2016年6月23日
通常は休止状態にある超大質量ブラックホール(SMBH)によって近くにある星がバラバラにされる過程について報告する論文が、今週掲載される。今回の研究では、そうした近くの星が「潮汐破壊事象」を経てSMBHに降着する際に収集されたX線データが解析され、通常は休止状態にあるブラックホールの重力効果を研究し、回転を計測するための新しい方法への道が開かれた。
SMBH周辺の時空に関する我々の現在の理解は、活発な降着が起きているブラックホールの知識に基づいているが、SMBHの90%は休止状態にある。このように通常は休止している大量のSMBHを研究する機会は、潮汐破壊事象によってもたらされている。
今回、Erin Karaたちは、X線反響マッピングという手法を用いて、すでに2011年に検出されていた潮汐破壊事象である可能性の高い事象(いわゆる‘Swift J1644+57’)のX線データを再解析し、鉄の光子からのX線エコー(X線反響)の観測について報告している。このX線反響を解析したところ、X線反響が降着流の内側部分に由来しており、反射気体が光の速さの半分の速さで流出していることが明らかになった。
Karaたちは、ブラックホールの回転を推定できていないが、上述した流れのモデルが今後改良されれば、持続的な降着が起きているブラックホール(全体の10%にすぎない)だけでなく、宇宙で休止状態にあるブラックホール(残りの90%に相当する)についても回転の測定が可能になるという考えを示している。
doi:10.1038/nature18007
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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