天文学:X線天文衛星「ひとみ」が役目を終える前に観測していたペルセウス座銀河団
Nature
2016年7月7日
日本のX線天文衛星「ひとみ」が運用終了前に行った観測により、ペルセウス座銀河団に静穏な大気が存在していることが明らかになった。この観測結果を報告する論文が、今週、Natureに掲載される。なお、2016年2月に打ち上げられた「ひとみ」は、3月に地上との通信が途絶え、分解したことがわかっている。
銀河団は、通常、重力によって束縛された数十から数千個の銀河からなる宇宙で最も大質量の重力的に束縛された天体であるため、宇宙論パラメーターと宇宙物理過程に関する手がかりとなっている。この銀河団には、通常、X線を放射する高温(約107~108ケルビン)のガスが含まれているが、この高温ガスの動態については、ほとんど解明が進んでいない。
今回、Andrew Fabianたちは、「ひとみ」からのデータを用いて、ペルセウス座銀河団の核の北西域におけるX線観測について報告している。このデータからは、ペルセウス座銀河団の核には予想外に静穏な大気があり、中心核から30~60キロパーセクの領域における速度分散(ガス速度の変動を示す測定指標)が毎秒164±10 kmであることが明らかになっている。さらにFabianたちは、銀河団の核の画像全体にわたる速度勾配が毎秒150±70 kmであることも報告している。この観測結果は、銀河団の核の部分では乱流圧が低いことを暗示している。
同時掲載のElizabeth BlantonのNews & Views論文では、「『ひとみ』によるペルセウス座の観測結果は、銀河団内のガスの運動に関する重要な初めての手がかりとなったが、これ以外にも、もっと興味深い環境と詳細部分が数多く探査されずに残っている」という結論が示されている。
doi:10.1038/nature18627
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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