【工学】3Dプリンターで作る音響ホログラム
Nature
2016年9月22日
液体中や空中の物体を触らずに操作するための複雑な3次元音場(音響ホログラム)を作り出す新しい方法について報告する論文が、今週掲載される。
この論文では、3Dプリンターで作ったプラスチック板を超音波スピーカーの前面に設置して、現行の技術で作られた場合の100倍複雑な音場を低コストで短時間に作り出す方法が説明されている。この方法は、医療イメージングの向上に役立ち、超音波の新たな用途を生み出すことが期待されている。
液体中や空中の物体を物理的に接触せずに操作するために音波(特に超音波)を利用することができる。しかし、現行の方法では、通常、スピーカーに似たトランスデューサー(電気信号を音に変換するデバイス)のアレイを使わなければならず、それを注意深く接続し、制御して目的の3次元音場を形成する必要がある。また、トランスデューサーの大きさには制限があり、作り出せる音場の複雑度にも限界がある。
今回、Peer Fischerたちは、3Dプリンターでプラスチック板(音響ホログラム)を作製した。この音響ホログラムを1台のトランスデューサーの前面に設置すると、音波を変化させて目的の音場を作り出すことができる。Fischerたちは、このシステムを用いて、水中に懸濁している微小粒子を強制的に収斂させて「平和のハト」に似た像を作り出した。また、Fischerたちは、液体中で物体を特定の経路に沿って移動させ、液滴を空中に浮遊させるためにこのシステムを利用できることも明らかにして、この音響ホログラムによって超解像イメージング、局部加熱と個別化医療に適切な複雑な音場を迅速に作り出すことが可能になるという考えを示している。
doi:10.1038/nature19755
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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