微生物学:ダイエット後のマウスの体重再増加速度に腸内微生物相が関係している可能性
Nature
2016年11月25日
マイクロバイオーム(腸内微生物相)は、ダイエット後のマウスの体重が再増加する速度の上昇に何らかの役割を果たしている可能性のあることを報告した研究論文が、今週掲載される。この新知見をヒトに役立てられるかどうかを見極めるには、今後の研究が必要だが、今回の研究は、長期的体重管理方法の開発における標的として腸内微生物相が有望なことを示唆している。
減量のためのダイエットを行った多くの人々は、減量の結果を長期間維持できず、過剰な体重再増加のサイクルに陥っている。この現象は、一般に「ヨーヨー効果」と呼ばれるが、その背後にある機構は解明されていない。
今回、Eran Elinavの研究チームは、反復性肥満のマウスモデルを用い、高脂肪飼料に固形飼料を組み入れた飼料摂取サイクルを実施した。Elinavたちは、減量に成功した肥満マウスにおいて腸内微生物相のバランス異常が持続し、減量後に肥満を促進する食餌を再び与えられたマウスの体重再増加速度が上昇する一因になることを明らかにした。そして、この腸内微生物相のバランス異常という状態を体重が増減する食餌サイクルを実施していない他のマウスに移したところ、そのマウスの体重増加速度が上昇した。Elinavたちは、それぞれのマウスから得た腸内微生物相の組成データを用いて、ダイエット後のマウスの体重増加を正確に予測する機械学習アルゴリズムを開発した。
また、Elinavたちは、腸内微生物相のバランス異常が、ダイエットを行った後のフラボノイド(植物化合物の一種)の腸内濃度の低下とエネルギー消費の減少の一因になっていることも明らかにし、フラボノイドを使った「ポストバイオティクス」療法が、ダイエット後のマウスに起こる過剰な体重再増加を抑制する上で役立つことを明らかにした。しかし、効果的な長期的体重管理のための治療法としてフラボノイド類やその他の生物活性代謝産物を臨床利用できるかどうかを調べるための研究が必要とされる。
doi:10.1038/nature20796
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