【地球科学】セントへレンズ火山のそばにマグマ供給源がない謎を解く
Nature Communications
2016年11月2日
セントへレンズ火山のメルト供給域の位置が、火山直下ではなく、東側にある近隣の山の付近だとする考えを示した論文が、今週掲載される。今回の研究で新たに実施された地震観測実験では、ほとんどの研究者によって高温のマグマが存在すると予想されているセントへレンズ火山下のマントルの温度が低いことが判明した。この研究は、活火山のメルト供給域に関する従来の学説に異議を唱えるものとなっている。
米国ワシントン州南部で北米カスケード弧に沿って位置するセントへレンズ火山の最近の噴火で最も大きなものは1980年に発生した。その際にセントへレンズ火山の側面が崩壊し、噴火時の火山の挙動に関する知識が見直された。セントへレンズ火山のメルト供給域については詳しい研究が行われたにもかかわらず、特にこの火山が主要な火山弧の西側50 kmに位置しているため、解明が進んでいなかった。
今回、Steven Hansenたちは、大規模な高解像度地震波画像実験を行い、セントへレンズ火山周辺での23回の爆発による地震波を分析して、この火山の地下部分の画像を得た。その結果、火山の地下には低温でウェットなマントルウェッジがあり、これがマグマ供給源である可能性が低いことが明らかになった。これを踏まえてHansenたちは、セントへレンズ火山の南東側(アダムス山の方向)にある地殻(深さ23~44 km)での群発的深発地震がマグマの動きを反映しており、その付近にメルト供給域が位置している可能性が高いという考えを示している。
doi:10.1038/ncomms13242
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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