抗ジカウイルス薬リード化合物を薬剤スクリーニングによって発見
Nature Medicine
2016年8月30日
ジカウイルスの複製を抑える化合物や、このウイルスに感染した細胞が死ぬのを防止する化合物が見つかった。これらの中には治療薬としてすでに認可されている薬品もいくつか含まれているので、これらの化合物やその標的は、抗ジカウイルス薬の開発や前臨床研究を進める出発点になると考えられる。
ジカウイルスは、デングウイルスやチクングニアウイルスと同様に、一部の感染者でインフルエンザに似た症状を引き起こす。しかしジカウイルス感染は、成長中の胎児では先天性の小頭症、成人ではギラン・バレー症候群を引き起こす恐れもあるところが、デングあるいはチクングニアウイルスの場合とは異なっている。H Song、G Ming、W Zheng、H Tangたちは、米食品医薬品局(FDA)が認可した薬剤や現在臨床試験中の薬剤を含む約6,000種類の化合物のライブラリーをスクリーニングし、2つのタイプの化合物群を見つけだした。1つはジカウイルスに感染した細胞の細胞死を防ぐもの、もう1つは感染細胞中でのジカウイルスの複製を妨げる化合物である。
2つのタイプの化合物はどちらも、ヒトの神経前駆細胞(胎児の大脳皮質の発生に関わる)やアストログリア(星状膠細胞)などの、ジカウイルス感染時の臨床症状に関わりのある数種類の脳細胞と3D脳培養オルガノイドで抗ウイルス活性を示した。また、これらの化合物は、ジカウイルス曝露の前に投与しても、後で投与しても効果があった。しかも、この2種類の化合物を一緒に用いると、個々に投与した場合よりも効果は高くなることも分かった。
これらを感染患者、特に妊娠中の女性の治療に用いるにはさらなる研究が必要である。次の段階としては、これらのリード化合物の効果と安全性を成人および胎児でのジカウイルス感染の動物モデルで検証することなどが不可欠だろう。
doi:10.1038/nm.4184
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
注目のハイライト
-
化石:最も古く知られている「爬虫類」の足跡Nature
-
惑星科学:月内部の非対称性を示す証拠Nature
-
古生物学:「シカゴ」始祖鳥が、この古代鳥に新たな知見をもたらすNature
-
理論物理学:二体問題を解くNature
-
がん:乳がん治療薬の臨床試験で生存率の向上が示されたものの、がんの消失は限定的であったNature Communications
-
Nature Scientist at Work コンペティションの受賞者の発表Nature