データ共有化を目的とするiPhoneベースのパーキンソン病研究
Scientific Data
2016年3月4日
消耗性疾患の一種であるパーキンソン病の臨床観察研究がiPhoneアプリのインターフェースだけを使って実施され、今後の研究で研究参加者のデータを他の研究者に利用させるかどうかを研究参加者に決めさせたところ、その75%以上が承諾していたことが明らかになった。今週、npj Parkinson’s Disease、Scientific Data、Nature Biotechnologyの3誌にそれぞれ掲載される3編の論文には、このmPower研究のさまざまな側面とパーキンソン病の管理と解明のための新たな貴重なツールとしてのスマートフォンの利用について記述されている。
パーキンソン病は、従来、その運動症状、例えば、ふるえ、歩き方の変化、動作緩慢(動作が遅いこと)などが特徴だとされてきた。
npj Parkinson’s Diseaseに掲載されるAndrew Tristerたちの論文では、mPowerアプリによる新しい方法によってパーキンソン病患者の機能評価を適正に実施でき、症状の重症度の日々の変化と患者の薬物に対する感受性に関する情報を高頻度で遠隔的に収集できるという考えが示されている。
一方、mPower研究データの共有化と再利用の拡大を促進するために作成されたScientific DataのData Descriptor論文では、12,000人以上が今回の研究への参加に同意し、そのうちの75%以上は、それぞれの研究データが今後の研究で利用されることを許可したことが明らかにされている。
さらにNature Biotechnologyに掲載されるJohn WilbanksとStephen Friend のCommentary記事は、今回の研究で新たに実施されたデータ共有化に対する同意取得過程とこうしたデータへのアクセスとデータ解析のできる研究者を認定する枠組みの重要性に言及して、以下のように述べている。「研究者自身が解析を行う前にこれらの研究データの共有化を迅速に実現することで、パーキンソン病患者の病状改善に関する今回の研究データの有用性を利用できるまでの時間を短縮できることを我々は期待している」。
doi:10.1038/npjparkd.2016.6
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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