Research Press Release

【農業】将来の世界の食料需要を満たすには草地での肥料散布量を4倍増させる必要がある

Nature Communications

2016年2月17日

2050年に世界の食料需要を充足するには、全世界の草地においてリンを含む無機質肥料と有機肥料の使用量を4倍に増やさなければならないという予測を示した研究論文が、このたび掲載される。世界の人口が現在のペースで増え続けると仮定した場合、リンの使用量を綿密に管理しない限り、草地と耕地の生産力が低下して、世界の食料生産の持続可能性が脅かされる可能性があるのだ。

リンは、草地の生産力の非常に重要な構成要素だが、家畜を放牧する草地で肥やしを集めて耕地に散布すると、この草地の土壌からリンが失われる可能性がある。失われた栄養素が補充されない場合には、食肉製品と乳製品が依存している牧草地の生産力が大きく損なわれる可能性が高い。

今回、Martin van Ittersumたちは、国連食糧農業機関(FAO)が1975~2005年に集めたデータを用いて、初めての草地のリン収支の全球モデルを構築し、その数値を利用して2050年までの農業条件を予測した。その結果、現在のところ世界の大部分の草地のリン収支が赤字、つまり投入量が損失量を下回る状態で、今後、土壌の肥沃度と生産力の低下を防ぎ、世界の人々の食料需要をみたすためには、現在の4倍(合計で年間24メガトン)の無機質肥料を散布する必要のあることが判明した。

地域別で見ると、家畜糞尿を原料とした堆肥を介した草地から耕地へのリンの流出が最も多いのがアジアで、世界の合計の44%を占めるのに対して、同じ調査期間中に正味で逆方向(耕地から草地へ)の流出となったのは、北米と東欧だけだった。従って、今後広範囲にわたる農地の拡大を防ぐためには、世界での栄養素の投入量の管理を改善する必要がある。

doi:10.1038/ncomms10696

「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。

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