Research Press Release
巨大な氷山は炭素封鎖の跡を残す
Nature Geoscience
2016年1月12日
巨大な氷山の融解水は鉄や他の鉱物を含んでおり、生物学的代謝と成長により南洋の深部で封鎖される炭素の最大20%の原因となる植物プランクトンの成長を助けているとの報告が、今週のオンライン版に掲載される。このような巨大な氷山は、南洋に同時に多数浮かんでいるが、大きさの違いを考慮に入れた場合でも、典型的な氷山の場合よりも10倍広い領域の植物プランクトンに影響を与えている。
南洋は、全球炭素循環に重要な役割を果たし、植物プランクトンの成長を含む、生物学的および化学的が混ざった過程によって海洋の全炭素封鎖量の約10%を担っている。しかしながら、これまでの研究では、融解水からの鉄と他の微栄養素の形での氷山による海洋の肥沃化は、植物プランクトンにより吸収され結果的に深海に封鎖されるCO2吸収には比較的小さな寄与しかないと考えられてきた。
Grant Biggたちは、海色(海洋表面の植物プランクトン生産性の指標となる)の人工衛星画像を解析し、南洋の外洋における少なくとも長さ18 km以上の氷山の範囲と関連付けた。彼らは巨大な氷山から数百キロメートルにわたって植物プランクトンの生産性が強い範囲が広がり、氷山が通過した後も少なくとも1か月は継続していることを発見した。Biggたちは、この新しい解析が巨大な氷山が南洋の炭素循環に対して桁外れの役割を果たしていることを明らかにしたと示唆している。
doi:10.1038/ngeo2633
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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