Research Press Release
【がん】移動中の初期の転移性細胞を捕捉する
Nature Communications
2015年9月9日
マウスの研究で、体内に広がる腫瘍細胞を早期発見できる革新的な方法が開発された。この新しいデバイスは、がん患者におけるがんの進行を止める方法の開発を促進する可能性がある。この研究成果についての報告が、今週掲載される。
循環性腫瘍細胞が体内に広がることは、がんが進行した段階で検出されることが多いため、重大な死亡原因の1つとなっている。これまで、血流を介して移動する「循環性腫瘍細胞」を検出するためのスクリーニングが多くの注目を集めてきた。しかし、循環性腫瘍細胞が極めてまれな細胞であるため、その検出は難題となっている。
今回、Sheaたちは、初期段階における転移を同定するためにマウスの研究を行い、生体材料でできた移植体を用いて、転移中の細胞の捕捉と画像化に成功した。このデバイスは、循環性腫瘍細胞を誘引する免疫細胞を誘導することで、循環性腫瘍細胞を捕捉し、それによって血流中と転移部位の腫瘍細胞の数を減らすことができる。
この移植体に動物のがん細胞の転移を減らす作用があるということは、この新規技術が治療法となって、循環性腫瘍細胞を捕捉するシンクの役割を果たす可能性のあることを示唆している。また、捕捉された循環性腫瘍細胞は移植体からも回収可能であり、それを解析することでバイオマーカー候補と個別化治療を開発する際の標的を同定できる。
doi:10.1038/ncomms9094
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
注目のハイライト
-
考古学:古代のゲノムからアバール人コミュニティーの社会組織と権力の再編が明らかになったNature
-
天体物理学:マグネターの巨大フレアという珍しい現象が観測されたNature
-
創薬:脳オルガノイドを使って神経発達障害の治療法を検証するNature
-
医学:実験室で培養された「ミニ結腸」をがん研究に用いるNature
-
遺伝学:鳥の歌のリズムを調べるNature Communications
-
心理学:画像の特徴は時間の経過の感じ方に影響を及ぼす可能性があるNature Human Behaviour