膵臓がんの間質と腫瘍に患者特異的なサブタイプが見つかった
Nature Genetics
2015年9月8日
膵臓がん細胞とその周囲の正常な膵臓細胞のそれぞれに2つのサブタイプが存在し、患者の生存率を左右していることが明らかになった。この研究結果は、膵臓がんの中で最も多く見られる膵管腺がんの患者に対する個別化治療の計画を改善する上で役立つ可能性がある。こうした新知見についての報告が、今週のオンライン版に掲載される。
膵管腺がんは、5年生存率がわずか4%という致死的な疾患だ。腫瘍のサンプルには、正常な細胞とがん細胞が混ざっているが、正常な細胞ががん細胞を取り巻いているため、がん細胞に特異的に生じ、膵臓がんの発生に寄与する分子レベルの変化を特定することが難しい。それに加えて、膵臓がんのサンプル間の遺伝学的差異の解明がほとんど進んでおらず、新しい治療法の開発が制約されている。
今回、Jen Jen Yehたちは、過去の膵臓がん研究で得られた遺伝子発現データを用いて、腫瘍細胞と正常な細胞の遺伝学的特徴をほぼ区別することに成功した。さらにYehたちは、こうした遺伝的シグナルを解析し、がん細胞と正常な細胞のそれぞれに2つのサブタイプがあり、患者の転帰に異なった影響を及ぼすことを明らかにした。腫瘍の第1のサブタイプは予後が悪く、1年生存率は44%であったのに対して、第2のサブタイプの1年生存率は70%だった。それぞれのサブタイプは、異なる遺伝子変異を伴っていた。
また、Yehたちは、転帰の悪い腫瘍サブタイプが、膀胱がんと乳がんにおける腫瘍と分子的に類似しており、この腫瘍サブタイプを有する患者は、より積極的で個別化された治療に対する反応が良好だと考えられることも明らかにした。ただし、それぞれのサブタイプと特定の治療法に対する応答がどのように関連しているのかを解明するには、今後の研究の積み重ねが必要だ。
doi:10.1038/ng.3398
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