ブタの家畜化の歴史に関する新見解
Nature Genetics
2015年9月1日
ブタがイノシシから家畜化された過程について、新たな解析結果が出た。それによると、動物の家畜化研究でよく用いられる前提の1つが、現代のブタとイノシシとから得られた遺伝学的データと一致しないことが分かった。
人類は今から数千年前に農業を目的として野生の動物を家畜化した。この家畜化の過程で、比較的少ない数の個体を野生集団から持続的に隔離することが行われたと考えられてきた。
今回、L Frantzたちは、ヨーロッパとアジアの600頭以上の家畜ブタとイノシシの遺伝学的データを解析した。その結果、ヨーロッパの家畜ブタの起源がアナトリアの家畜ブタであることが示され、これについては予想通りだった。だが、アナトリアの家畜ブタのDNAのかなりの部分がヨーロッパのイノシシと同じであることも判明した。Frantzたちは、いくつかの進化モデルを検証したところ、家畜ブタが当初から一貫してイノシシと交雑していたと考えれば、この遺伝学的データを最もよく説明できることを明らかにした。従って、家畜ブタは、数多くの野生個体群のモザイクであり、少なくともヨーロッパの品種の場合には、このモザイクに絶滅種も含まれている可能性がある。アジアのブタのデータからは、これと類似した家畜化様式が示唆されたが、明確な結論は得られなかった。Frantzたちは、農業にとって重要な形質の選択を人間が持続的に行ってきたことで、交雑の影響が打ち消され、家畜化が維持されたと推論している。
doi:10.1038/ng.3394
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
注目のハイライト
-
がん:膵臓がんまたは大腸がんの患者において有望な効果を示すワクチンNature Medicine
-
生態学:熱波が熱帯の鳥類の個体数減少と関連しているNature Ecology & Evolution
-
気候変動:ペリト・モレノ氷河の後退が最近大幅に加速Communications Earth & Environment
-
考古学:スペインの洞窟で新石器時代の人肉食の証拠が発見されるScientific Reports
-
気候変動:鉱物資源の不足が低炭素化移行を制限する可能性Nature Climate Change
-
人類の進化:スラウェシ島における初期ホミニンの居住Nature