【進化】アフリカのバカ・ピグミーの低身長は乳児期に決まる
Nature Communications
2015年7月29日
アフリカ西部に住むバカ族はピグミーと呼ばれることがある。「ピグミー」は、世界中の身長の低い民族を記述するために使用される用語だが、生物学的根拠はない。このほど、バカ族に関する2つの縦断的研究が行われて、生後2年間に成長が著しく鈍化することが低身長の原因であることが明らかになった。こうしたバカ族の成長サイクルは、アフリカ東部に住む低身長の部族には見られない。このことは、類似した環境に対応した収斂進化が起こったことを示唆している。この研究結果の報告が、今週掲載される。
平均身長の低い集団の存在は、現生人類の成長パターンが多様なことを明らかにしているが、この多様性の背後にある機構はよく分かっていない。平均身長の低いアフリカ人集団には共通の祖先があり、居住する環境(多雨林)も、社会経済的、文化的行動パターンも類似している。このことがアフリカピグミーの表現型の生物学的根拠になると示唆されているが、ピグミーの表現型が成長過程のどの段階でどのように獲得されたのかは明らかになっていない。
今回、Fernando Ramirez Rozziたちは、数百人のバカ族(新生児から25歳まで)を対象とした2つの縦断的研究を実施した。その結果、バカ族の新生児の身長はフランス人集団の身長の標準範囲内にあるが、生後2年間の成長速度が著しく低下することが判明した。Rozziたちは、生後2年間の成長の鈍化によって成長遅延が持続して、そのことが3歳以上のバカ族の子どもの身長に示されていることを明らかにした。しかし、こうした成長の鈍化を除けば、バカ族の人々の成長速度は、他の民族と同じだった。
doi:10.1038/ncomms8672
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
注目のハイライト
-
考古学:古代のゲノムからアバール人コミュニティーの社会組織と権力の再編が明らかになったNature
-
天体物理学:マグネターの巨大フレアという珍しい現象が観測されたNature
-
創薬:脳オルガノイドを使って神経発達障害の治療法を検証するNature
-
医学:実験室で培養された「ミニ結腸」をがん研究に用いるNature
-
遺伝学:鳥の歌のリズムを調べるNature Communications
-
心理学:画像の特徴は時間の経過の感じ方に影響を及ぼす可能性があるNature Human Behaviour