Research Press Release
【臓器移植】一旦起こった拒絶反応を止められるかもしれない
Nature Communications
2015年7月8日
臓器移植後に細菌感染が引き金となって拒絶反応が起こった場合でもその後の移植で拒絶反応が起こるとは限らないことがマウスの研究で明らかになったという報告が、今週掲載される。拒絶反応とは、移植された臓器を免疫系が異物と認識して攻撃する反応だ。臓器移植のレシピエントの一部は、移植から数週間後に拒絶反応を起こし、免疫系が「警戒態勢」をとっているためにさらなる移植があったときには短期間で拒絶反応を起こす。また、免疫寛容が当初確立されていても数カ月あるいは数年後に移植された臓器に対して拒絶反応が起こることもあり、その引き金となるのが細菌感染だと考えられている。そうした場合には、2度目に移植された臓器に対する拒絶反応も早期に起こり、免疫寛容の喪失が永続すると考えられていた。
今回、Anita Chong、Maria-Luisa Alegreたちは、マウスに心臓移植を行い、免疫寛容を確立させた後、このマウスに細菌を感染させた。すると、この細菌感染を引き金とする移植拒絶が半数のマウスに起こった。しかし、この免疫活性化は一過性で、免疫系は、この細菌を一掃してしまうと、自発的に当初の免疫寛容状態に戻り、別の心臓移植を受け入れた。以上の結果は、免疫寛容が移植拒絶の記憶に優先する状態を示しており、もしヒトの患者で裏付けられれば、臓器移植、自己免疫とがんの治療法にとって重要な意味を持つ可能性がある。
doi:10.1038/ncomms8566
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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