Research Press Release
【遺伝】殺人ペスト菌の進化の過程
Nature Communications
2015年7月1日
ペストの原因細菌であるペスト菌は、最初、命に関わることの多い肺疾患を引き起こすように進化し、その後、強い感染力を備えるようになったことが明らかになった。こうした変遷をもたらしたのは比較的単純な分子の変化だったが、他の呼吸器系病原体も同じような経路で出現した可能性があることが示唆されている。この研究成果についての報告が、今週掲載される。
軽度の胃腸障害を引き起こす仮性結核菌がペスト菌に進化したのは、過去1万年の間のことだった。ペスト菌は、腺ペスト、敗血症ペスト、そして、最も致命的で感染性の高い肺ペストなどさまざまなペストを引き起こす。今回、Wyndham Lathemたちは、仮性結核菌とペスト菌の中間的な系統にあたる「古代の」ペスト菌の分離株を用いて、ペスト菌の進化をたどり、こうした変遷の過程を明らかにした。
ペスト菌の古代の菌株は、肺ペストを引き起こす能力を与える1つの遺伝子を獲得し、その後、この遺伝子がコードするタンパク質の1つのアミノ酸が変異することで、感染力の強い現代の菌株が多くなった。その結果、最悪の事態が生じた。致死性が高いだけでなく、世界的流行を引き起こす可能性のある細菌が出現したのだ。
doi:10.1038/ncomms8487
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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