ADVERTISEMENT FEATURE

本物の多様性がここに

最先端の研究を行う生命科学者たちが日本に集い、最新の研究成果の相互理解に繋げる。

Produced by

茨城県つくば市で開催された第19回HFSP受賞者会合式は、生命科学研究者に対し、さまざまな領域で活動する研究者と交流する機会を数多く提供した。

海洋では、多様な種が集まることで、それぞれが海洋生態系に独自に貢献している。同様に、2019年7月に日本で開催された学際的な会議は、有望な研究者など約280人が集まることで、生命科学研究の世界的なネットワークに貢献したと言えるだろう。

学術会議がますます専門化していく時代にあって、植物遺伝学者が腸内細菌の研究者と同席したり、動物行動学者ががんの研究者とコーヒーを片手に語り合ったりする場は珍しい。それでも研究者たちは、そうした多様な交流を心から楽しんでいる。DNAフィンガープリンティング・診断センター(インド)のRashna Bhandariは、「この場の多様性は極めて新鮮です」と語る。

第19回ヒューマン・フロンティア・サイエンス・プログラム(HFSP)受賞者会合は、日本から提唱されたこのプログラムが発足から30周年となるのを記念して、2019年7月10~12日に茨城県つくば市で開催された。1989年に設立されたHFSPは、人類にとって有益な生命科学領域の基礎研究を推進している。提唱したのは、今年101歳を迎えた中曽根康弘元首相だ。中曽根元首相の構想は、国際共同研究を支援し、世界中の駆け出しの科学者を育成することだった。HFSPは、この構想を実現するために、生命科学の最先端の革新的研究に研究グラントやポスドクフェローシップを授与しており、今年のイベントには、HFSPの研究グラントとフェローシップの受賞者約200人が出席した。メンバー国・機関の数は15まで増えている。

海洋における微生物相互作用の探求

HFSPの資金提供を受けるドイツ、イスラエル、米国の科学者たちは、海洋微生物のゲノムを解析することによって、海洋微生物間の数々の複雑な相互作用を解き明かそうとしている。微生物は種の多様性が極めて高く、その代謝もさまざまに異なるため、これは決して容易な課題ではない。しかし、その困難なプロジェクトには重要な意義がある。海洋微生物は、世界の酸素の一次生産の半分を担っているとともに、海洋食物網を支えているためだ。さらに、海洋微生物は、大気から二酸化炭素を隔離して、地球温暖化を抑制する能力を持っている。

忘れられたバイオポリマーを追い求めて

好奇心本位の研究は商業的優先度の高いものに比べて後回しにされることが多いが、HFSPはそうした研究も奨励している。その一例が、Bhandariが「忘れられたバイオポリマー」と呼ぶポリリン酸についての研究である。Bhandariは、Henning Jessen(ドイツ・フライブルク大学)およびPaul Wender(米国スタンフォード大学)と共に2016年にHFSPのプログラム・グラントを受賞し、生きている全ての生物体の中でこの重要な生体分子がどのように存在しているのかを明らかにしたが、それでも多くの面で軽視されてきた。「この分子を見ていると、1950~60年代に生化学者たちがDNAについてどのように感じていたかがわかります」と彼女は話す。「わからないことだらけなのです」。Bhandariらは、この分子が哺乳類でどのように合成されているのかを明らかにしようとしている。この分野の研究はあまり盛んではなく、Bhandariの推定によれば年間発表される論文は10報もない。このプロジェクトへの取り組みを可能にしているのは、HFSPの資金提供だ。「基礎研究と応用研究は不当に分断されています」と彼女は言う。「私は、中曽根元首相が提唱したHFSPのコンセプトをとてもうれしく思いました。世界の一部では、非実際的な(blue-sky)研究が悪い言葉として捉えられています。しかし、こうした研究はとても重要なのです」。

「忘れられたバイオポリマー」と彼女が呼ぶポリリン酸について話すRashna Bhandari。

砂糖がハエにストレスを与える

プリンストン大学(米国)のHFSP長期フェローLuisa Pallaresは、HFSPの支援を受けて、新たな研究領域に乗り換えた。Pallaresは、ハエを環境中のストレッサー(有害因子)、とりわけ高糖食に強くする遺伝子を研究している。「もともと、ヒトは食事で今ほど大量の糖を摂取していませんでした。大量の糖は、糖尿病や心疾患といったあらゆる食物関連疾患につながります」とPallaresは説明する。「しかし、驚くほど大量の糖を摂取しても、太りもせず病気にもならない人がいます。そうした人の体には、糖というストレスへ応答する仕組みを調節している何かがあるはずなのです」。

Pallaresが最初にこの問題に興味を持ったのは、博士号の取得を目指しているときであったが、この研究を追求するには、完全に新しい方向に目を向け、マウスの研究からハエの研究に切り替える必要があった。「HFSPのフェローシップを見つけたとき、『私に必要なのはこれだ!』と思いました」と彼女は振り返る。「HFSPのフェローシップは、若手研究者が安全地帯から飛び出して新しい領域や問題を探究しようとするのを後押ししてくれます。私はこの分野の専門家ではなかったので、普通なら研究資金はもらえませんでした」。

Luisa Pallaresは、ハエに高糖食を与えて、環境中のストレッサーへの耐性を強固にする遺伝子を研究している。

ノーベル賞受賞者のゆりかご

HFSPは、2010年以降、生命科学に対して先駆的な貢献を行ったと認められた科学者に対し、中曽根元首相の名前を冠した賞を毎年授与している。今年の「HFSP中曽根賞」は、細胞増殖のマスター制御因子「TOR(target of rapamycin)キナーゼ」を発見したスイス・バーゼル大学バイオセンターのMichael Hallに授与された。TORキナーゼの発見により、細胞の増殖と、それが発生、疾患、加齢で果たす役割に関する理解が深まった上、新たな未開拓領域が切り開かれた。Hallは、受賞記念式典で、哺乳類のTORががんを発生させるメカニズムについて講演を行った。

2019年の「HFSP中曽根賞」を受賞したMichael Hall。彼は、細胞増殖を制御するTOR(target of rapamycin)キナーゼに関する自身の研究を紹介した。

HFSPの大胆な取り組みがうまくいっていることを示す証拠は、受賞経験者から見て取れる。受賞経験者のノーベル賞受賞者数は28人に上り、HFSPの創設以来、ノーベル賞受賞者をほぼ毎年1人を輩出している計算になるのだ。そうしたHFSP発のノーベル賞受賞者の1人であるAda Yonathは、今回の会合で、リボソーム生物学の興味深い概況を紹介した。彼女によると、リボソームという細胞内タンパク質工場は、微生物の生命の起源であるとともに、次世代抗生物質の工場になる可能性を秘めているという。

BhandariとPallaresは、過去の会合に出席できなかったことを悔やんでいる。「これまでの会合にも参加できればよかったです」とBhandari。「これまでの会合に来られなかったことが本当に残念です」と口をそろえるPallaresは、さらにこう続けた。「今回の経験から、私は他の人たちに対しこう言うでしょう。『絶対に出席すべき!』だと」。

Advertiser retains sole responsibility for the content of this article

原文:Pure diversity on display

プライバシーマーク制度