注目の論文
レーザーでブラックホール近傍の条件を再現する
Nature Physics
2009年10月19日
Laser recreates conditions near a black hole
レーザーを用いて、ブラックホールの近傍で作られるものに似た、物質の極端な状態を生成できることが、Nature Physics(電子版)に報告される。このような状態を実験室で再現できれば、ブラックホールやほかの同じくらい重い天体の近くで起こる過程の研究だけでなく、このような天体の天文測定結果のよりよい解釈がずっと容易になる。
ほとんどのプラズマは、太陽の中で生じているものを含めて、電子と高温ガスの原子が衝突して電離した、つまり電荷を帯びた気体の原子でできている。しかし、ブラックホールを取り巻くプラズマの電離は、物質がブラックホールに吸い込まれるときに生じるとてつもない光子束によって起こる。このような「光電離」したプラズマによって、特性X線のスペクトルが生じ、地球を周回する人工衛星によって検出できる。しかし、光電離プラズマは、普通のプラズマよりも生成することがはるかに難しい。
光電離プラズマを生成するために、藤岡慎介たちは、300ギガワットのレーザーを用いて、薄いシリコン箔を爆縮させた。その結果生じたプラズマから放射されるX線スペクトルの形状が、チャンドラX線天文衛星によって測定された、ブラックホールの候補である連星Cygnus X-3や中性子星であるVela X-1の放射スペクトルと極めて似ていることがわかった。この結果から、これらのスペクトルの特定部分の起源に関する一般的な解釈が間違っている可能性があることが示唆され、このような天体系のモデルの改善に役立つかもしれない。
doi: 10.1038/nphys1402
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