天体物理学:ブラックホールの質量における「禁制領域」の確認
Nature
2026年4月2日
Astrophysics: Confirming a forbidden range of black-hole masses
重力波観測所のグローバルネットワークであるLIGO–Virgo–KAGRA(LIGO〔ライゴ〕:Laser Interferometer Gravitational‑Wave Observatory〔レーザー干渉計重力波観測所〕;Virgo〔バーゴ〕:Virgo Gravitational Wave Interferometer〔重力波検出器〕;KAGRA〔かぐら〕:Kamioka Gravitational‑wave Antenna〔大型低温重力波望遠鏡〕)は、連星ブラックホール系を観測した重力波突発現象カタログのバージョン4.0(GWTC-4:fourth Gravitational-Wave Transient Catalog)のデータから、ブラックホールの質量における「禁制領域(forbidden range)」を示す証拠を検出した。Nature に掲載されるこの発見は、不安定性により特定の質量のブラックホールは存在し得ないという理論を裏づけるものであるが、それは二次質量のブラックホール(特定の連星系における2つのブラックホールのうち小さい方)に限られる。この知見は、恒星とブラックホールの進化の理解を深める可能性がある。
恒星進化理論によると、特定の非常に質量の大きな恒星は、対不安定型超新星(pair-instability supernovae)として知られる爆発的な現象を起こすと予測されている。この現象は、きわめて強力で破壊的であり、ブラックホールの残骸を残さないことがある。この過程により、ブラックホールが存在し得る質量の範囲には、対不安定型ギャップ(pair-instability gap)と呼ばれる「空白領域」が生じると考えられており、その範囲は、太陽質量の50倍から130倍と予測されている。これまで、このギャップが実際に存在するかどうかの確たる証拠は得られていなかったが、重力波観測所は、こうした巨大な天体現象からの信号を検出できるため、対不安定型超新星の結果を探る有望な手段となっている。
LIGO–Virgo–KAGRA共同研究(米国、イタリア、および日本の観測所による)が検出した重力波カタログバージョン4.0のデータは、連星ブラックホール系内の質量分布に焦点を当てている。Hui Tongら(モナッシュ大学〔オーストラリア〕)の分析によると、これらの系における二次ブラックホールの質量分布に対不安定型ギャップが存在することを示唆している。このギャップは、連星系における2つのブラックホールのうちより大きな方では観測されないが、およそ44〜116太陽質量の間には二次ブラックホールが存在しないように見える。著者らは、このギャップは連星ブラックホールのスピン挙動が変化すると思われる質量範囲と一致しており、背後にある対不安定型過程を反映している可能性があると示唆している。
著者らは、こうした系において、主ブラックホールは、対不安定型超新星を経て形成される二次ブラックホールとは異なる生成過程をたどる可能性があるため、この「禁制の質量ギャップ」内に存在し得ると提案している。この発見は、大質量星の進化に関する理解を深める重要な手がかりとなる。
- Article
- Published: 01 April 2026
Tong, H., Fishbach, M., Thrane, E. et al. Evidence of the pair-instability gap from black-hole masses. Nature (2026). https://doi.org/10.1038/s41586-026-10359-0
doi: 10.1038/s41586-026-10359-0
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