地球科学:沿岸の海面はこれまで考えられていたよりも高いかもしれない
Nature
2026年3月5日
Geoscience: Coastal sea levels may be higher than previously thought
世界中の沿岸部の海面高度は、これまでの研究で平均0.3メートル過小評価されていたかもしれないことを報告する論文が、Nature にオープンアクセスで掲載される。特にグローバルサウスの一部では、これまで想定されていた数値より最大1メートル高い可能性がある。この発見は、既存の数値を再評価し、気候変動が沿岸地域に与える影響をより正確に把握するため、今後の沿岸災害評価において海面測定値と沿岸の標高を適切に組み合わせる必要性を明らかにしている。
海面上昇は、沿岸地域にとって重大な脅威であり、気候変動に関する政府間パネル(IPCC:Intergovernmental Panel on Climate Change)は、2100年までに海面が0.28~1メートル上昇する可能性があると推定している。しかし、世界の沿岸部における海面上昇の影響評価では、現地での直接的な海面高度測定を考慮せず、海面の高さを仮定することが多い。
Katharina SeegerとPhilip Minderhoud(ワーゲニンゲン大学・研究センター〔オランダ〕)は、2009年から2025年までに発表された沿岸の曝露と災害影響評価に関する査読された科学文献385件を分析し、世界規模のメタ分析を実施して、一般的に想定されている海面の高さと実際に測定された沿岸海面の高さの差を算出した。その結果、全研究の90%以上が、測定された海面ではなく、重力モデルにもとづく想定海面、いわゆるジオイド(geoids)に依存していることが判明した。その結果、使用したジオイドモデルによって海面の高さが0.24~0.27メートル過小評価されており、最大で5.5~7.6メートルの誤差が生じている。したがって、海面上昇やそのほかの沿岸災害影響評価は、平均的に実際の海面の高さより低い沿岸の海面の高さを用いて計算されており、沿岸部の曝露を過小評価していたのである。この過小評価は、特にグローバルサウス、具体的には東南アジアと太平洋地域で顕著であった。ラテンアメリカ、北米西海岸、カリブ海、アフリカ、中東、およびインド太平洋地域でも過小評価が確認された。これらの問題は、地球重力モデルが世界中の局所海面を許容範囲内で推定できるという前提に起因すると指摘されている。しかし、これらのモデルは重力と地球の自転のみを考慮しており、潮汐、海流、および風など、現地の海面の高さを決定するほかの要因は考慮していない。著者らは、これまで出版された文献に見られる最も一般的な仮定のメタ分析と、沿岸標高と実測海面高度データの適切な統合を通じて、これまでの推定値と比較して、仮に海面が1メートル上昇した場合、最大37%多くの陸地が海面下となり、世界中で7700万~1億3200万人に影響が及ぶ可能性があると結論づけた。
著者らは、海面上昇の影響を評価する既存の手法の再検討が必要であり、これは、政策立案者、気候変動対策資金、および沿岸適応計画に影響を及ぼす可能性があると結論づけている。
シュプリンガーネイチャーは、国連の持続可能な開発目標(SDGs;Sustainable Development Goals)、および当社のジャーナルや書籍で出版された関連情報やエビデンスの認知度を高めることに尽力しています。本プレスリリースで紹介する研究は、SDG 13(気候変動に具体的な対策を)に関連しています。詳細は、「SDGs and Springer Nature press releases」をご覧ください。
- Article
- Open access
- Published: 04 March 2026
Seeger, K., Minderhoud, P.S.J. Sea level much higher than assumed in most coastal hazard assessments. Nature (2026). https://doi.org/10.1038/s41586-026-10196-1
doi: 10.1038/s41586-026-10196-1
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