工学:橋梁が崩壊した際に支え続ける方法
Nature
2025年9月4日
Engineering: How to keep bridges standing in the event of failure
鋼製トラス橋が重大な損傷を受けた後、ねじれやたわみが特定の条件下で構造物の崩壊を防ぐかもしれないことを報告する論文が、Nature にオープンアクセスで掲載される。この発見は、より安全な橋梁設計に向けた新たな視点を提供する。
鋼製トラス橋は、多数の相互接続された棒材を用いて荷重支持システムを形成する一般的な構造物である。これらの棒材は、損傷していない構造体内で発達し得る主要なメカニズムを通じて、寿命期間中に想定される荷重に抵抗するよう協調して機能するよう設計されている。しかし、橋の一部が破損した場合、構造体は形状と挙動の変化(橋梁部材の移動やたわみ)を経験し、これがさらなる崩壊を阻害するか促進するかのいずれかとなる。損傷した部材からの荷重を再配分し崩壊を防ぐ「二次的」抵抗メカニズムは、建築物ではよく理解され(設計に組み込まれている)が、これまで橋梁ではほとんど研究されていなかった。
Jose Adamら(バレンシア・ポリテクニク大学〔スペイン〕)は、実験(鋼製トラス鉄道橋の縮尺模型を用いた)とシミュレーションを組み合わせて、主要部材を切断して損傷を模擬した典型的な損傷シナリオにおける構造物の応答を調査した。著者らは、このような重大な損傷後のさらなる崩壊を抑制する主な二次抵抗メカニズムとして、損傷点周辺のパネルのたわみ、平面外曲げ、橋梁全体のねじれなど6つを特定した。より極端なシナリオを調査するため、橋梁モデルはシステム全体の崩壊に至るまで荷重を増やして試験された。著者らは、損傷状態であっても橋梁が運用荷重要求の1.8倍から3倍に耐えられることを発見した。この試験により、最終的な崩壊につながりやすい弱点も特定できた。
これらの知見は、鋼製トラス橋の安全性向上に向けた設計および維持管理における手法の新たな示唆を提供する。Katherine Cashellが同時掲載されるNews & Viewsで指摘するように、この結果は「橋梁には本質的なレジリエンス(復元力)が備わっており、それを活かし、洗練された設計を通して一層強化することができる」ことを示唆している。
- Article
- Open access
- Published: 03 September 2025
Reyes-Suárez, J.C., Buitrago, M., Barros, B. et al. Latent resistance mechanisms of steel truss bridges after critical failures. Nature 645, 101–107 (2025). https://doi.org/10.1038/s41586-025-09300-8
doi: 10.1038/s41586-025-09300-8
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