注目の論文

気候変動:干ばつの深刻化を招く要因の評価

Nature

2025年6月5日

Climate change: Assessing the drivers of increased drought severity

Nature

1901年から2022年にかけての干ばつの深刻度が増加傾向にあることを報告する論文が、今週のNature にオープンアクセスで掲載される。大気の蒸発需要(atmospheric evaporative demand)と呼ばれる要因によって、1981年以降、世界の干ばつの深刻度は平均40%増加したと考えられる。この発見は、このプロセスが干ばつの深刻さを増加させる大きな役割を果たしており、将来の温暖化シナリオの下でも続く可能性が高いことを示唆している。

干ばつは、生態系、生物多様性、および人間集団に深刻な影響を及ぼし、気候変動の結果、より頻繁に、より激しくなると予測されている。大気の蒸発需要は、地球表面から蒸発および蒸散する可能性のある水の量を示す指標であり、地球表面における水の利用可能性に影響を与える。しかし、このプロセスが干ばつの深刻さにどのように影響するかは、まだ十分に理解されていない。

干ばつに対する大気の蒸発需要の影響を調べるため、Solomon Gebrechorkosら(オックスフォード大学〔英国〕)は、1901年から2022年までの世界の干ばつの高解像度データセットを作成した。その結果、世界中で干ばつの深刻さが増加傾向にあり、乾燥地域はより乾燥し、湿潤地域も乾燥傾向にあることがわかった。1981年までは干ばつの傾向はほぼ横ばいであったが、それ以降、大気中の蒸発需要によって、この期間に干ばつの深刻度は世界平均で40%増加したという。2018年から2022年の間に、干ばつの影響を受ける地域は、1981年から2017年の期間と比較して平均74%拡大した。著者らは、大気の蒸発需要がこの増加に58%寄与したことを示唆している。2022年には、地球の地表の30%が(特にヨーロッパと東アフリカで)中程度と極度の干ばつの影響を受け、そのうち42%が大気の蒸発要求に起因すると著者らは指摘している。

Gebrechorkosらは、今回の調査結果は、干ばつの深刻さに対する大気の蒸発需要の影響を示すものであり、現在の温暖化傾向の下では、この影響が続く可能性が高いことを強調している。著者らは、干ばつの影響を緩和するために、さらなる社会経済的および環境的対策が必要であると提案している。

Gebrechorkos, S.H., Sheffield, J., Vicente-Serrano, S.M. et al. Warming accelerates global drought severity. Nature (2025). https://doi.org/10.1038/s41586-025-09047-2


 

doi: 10.1038/s41586-025-09047-2

英語の原文

注目の論文

「注目の論文」一覧へ戻る

advertisement
プライバシーマーク制度