物理学:人間の移動に普遍的なパターンがあった
Nature
2021年5月27日
Physics: Universal patterns in the way people move
人間が都市の内部と周辺を移動する頻度と移動距離は、予測可能で普遍的なパターンに従っているとした分析結果を報告する論文が、今週、Nature に掲載される。今回の研究は、人間がそれほど頻繁に遠くに出掛けることはないだろうという直観的な考えを裏付けている。人間が、居住地の市内や世界中をどのように移動するのかを予測することは、都市計画や感染症流行のモデル化を始めとするさまざまな研究分野にとって重要だ。
人間の移動は、人間社会の基盤をなしているが、人間の移動に関する正確かつ定量的な記述は不完全なままだ。重力法則や放射モデルなどの既存のモデルは、移動の流れの空間依存性を重視しており、実世界のデータを完全に再現するには不十分であることが多い。
今回、Lei Dongたちの研究チームは、匿名化された携帯電話データセットに基づいた、世界数都市からの大規模な移動データを分析した。これは、シンガポール、大ボストン都市圏(米国)、ダカール(セネガル)、アビジャン(コートジボワール)と、ポルトガルの数都市からの移動データであり、それぞれが2006~2013年の異なる期間中に収集された。Dongたちは、移動距離だけでなく訪問頻度も考慮に入れることで、2か所以上の場所を訪問した人の数が、それぞれの都市で非常に類似していることを明らかにした。また訪問者数は、任意の都市の全ての場所において、訪問頻度の上昇と移動距離の増加に応じて予測可能なパターンで減少することも分かった。これに基づいて、Dongたちは、移動性の普遍的法則を定式化し、これにより、人間集団の移動の時間的・空間的範囲をモデル化し、再現することができた。
関連するNews & Viewsでは、Laura AlessandrettiとSune Lehmannが、今回の研究によって「人間の移動に関する既存の理論的枠組みに欠けていた重要な要素が特定された。それは訪問頻度だ」と述べている。彼らはまた、この知見が、さまざまな都市システムに有効であり、「さまざまな時間スケールで移動の流れの記述と予測を行うための一般的な枠組みになる」と付記している。
doi: 10.1038/s41586-021-03480-9
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