注目の論文

宇宙物理学:星空が一番きれいに見える場所

Nature

2020年7月30日

Astrophysics: Finding the best view of the sky at night

南極高原の最高地点にある分厚い氷床の円頂丘「ドームA」で見ることができる夜の星空は、地球上で一番澄んだ星空なのかもしれないと示唆する論文が、今週、Nature に掲載される。

地上での天体観測の最大の課題の1つが「シーイング」、つまり、大気のゆらぎが天文画像の質に及ぼす影響だ。星がキラキラ輝くのは、この大気のゆらぎのためだ。現存する最高の天文台は、中緯度の高地(チリとハワイ)に立地しており、シーイングは0.6~0.8秒角の範囲内にある。南極は、自由大気のゆらぎが弱いため、シーイングが向上する可能性があり、ドームCという氷床の円頂丘でのシーイングは0.23~0.36秒角の範囲と推定されている。

今回、Bin Maたちの研究グループは、南極大陸上のもう1つの氷床の円頂丘である「ドームA」を調べた。Maたちは、ドームA上空の境界層(地球の大気の最も低い部分で、地表の摩擦の影響を受ける)がドームCよりも薄いと推定している。これまでのドームAからの測定は日中に行われていたが、Maたちは、夜間のシーイングの中央値が0.31秒角、最低値が0.13秒角だったと報告している。このドームAからの測定は、地上8メートルで行われたが、ドームCでの同じ高さからの測定結果よりはるかによく、ドームCから地上20メートルで測定した結果に匹敵していた。Maたちは、ドームAは上空の境界層が薄いため、望遠鏡の設置はそれほど難しいことではないという考えを示している。

ドームAのように寒さが厳しく、孤立した環境が、望遠鏡の設置場所として現実的かどうかは、今のところ分からない。Maたちは、観測装置の視認性が霜によって影響を受けたことを指摘し、この問題を克服すればシーイングが10~12%改善する可能性があるという考えを示している。

doi: 10.1038/s41586-020-2489-0

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