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mRNAワクチンとmRNA治療薬:COVID-19の先にあるもの

COVID-19に対処するためのmRNA技術から得られた知見が、既存の疾患や将来起こりうるパンデミックと闘うためのワクチン・治療薬開発に役立っている。

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COVID-19の出現から1年もたたないうちに、mRNA技術に基づく全く新しいタイプのワクチンが緊急使用の許可を得た。モデルナ社、およびファイザー社/ビオンテック社のmRNAワクチンは、世界各国で何十億回分が接種され、数え切れないほどの人命を救っている。

mRNAワクチンは、宿主細胞を利用してSARSCoV-2のスパイクタンパク質を生成する。

selvanegra/iStock/Getty Images Plus/Getty

今回のCOVID-19パンデミックの間には、数多くの学びとブレイクスルーがあった。こうした学びとブレイクスルーは、今後のアウトブレイク(集団発生)に対する備えと対応力を改善させるだろう。2022年4月4〜5日に、モデルナ社のスポンサーで開催されたNature Conference 「Understanding COVID-19 to prepare for the next pandemic(COVID-19を理解して次のパンデミックに備える)」では、感染症の診断、サーベイランス、ワクチン開発、治療の専門家が一堂に会した。

課題と学び

この会議ではさまざまなセッションを通して、現在直面している課題や、将来のパンデミックへのより迅速で集中的な対応を可能にする発見について討議が行われた。

参加者たちは、国際的な緊急事態に分類されているCOVID-19パンデミックの「急性期」を終わらせるには、ワクチンと、その効果に関する実世界のエビデンスを収集することが極めて重要であるという合意をみた。事態は今、エンデミック(局地的流行)期に向かっていると願いたい。エンデミックはウイルスが局地的に蔓延する状態であるため、保健衛生上の緊急性は低下する。

この会議には、モデルナ社(米国マサチューセッツ州ケンブリッジ)からJacqueline Miller医師(上級副社長兼感染症分野責任者)およびPaul Burton医師(最高医療責任者)という2名の専門家が会議に参加した。彼らは、急速に拡大している同社の開発パイプラインと、公衆衛生政策やワクチン開発に影響を与えるリアルワールドエビデンスの重要性についてプレゼンテーションを行った。

COVID-19のmRNAワクチンが成功したことで、SARS-CoV-2だけでなく、インフルエンザウイルスやRSウイルスなど他の呼吸器病原体でも、多くの新しいmRNA ワクチンの臨床開発が加速している。

Miller医師は、「DNA を鋳型にしたmRNAワクチンを実験室で迅速に製造する能力」「臨床試験に参加するボランティアの意思」「国々の医療・保健当局の支援」がそろったことで、モデルナ社は3万人超の大規模臨床試験を実施することができたと説明する。この臨床試験を受け、2020年から2021年にかけて、同社の最初のワクチンであるCOVID-19ワクチンが世界各国で迅速に承認されることになった。

潜在能力を具現化する

弱毒化生ウイルスや特定のウイルスタンパク質に基づくワクチンとは異なり、モデルナ社のmRNAワクチンに含まれるのは単一のRNA転写物である。この転写物は宿主細胞の装置を使って、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質を生成し、これが宿主細胞の細胞表面に提示される。これにより、SARS-CoV-2の感染から防御するための免疫応答が引き起こされる。

JACQUELINE MILLER(ジャクリーン・ミラー)モデルナ社上級副社長兼感染症分野責任者。

「SARS-CoV-2ワクチンのmRNAプラットフォームによる弊社の経験は、今後の弊社の開発活動に有用な情報をもたらしてくれます」とMiller医師は語る。RNA技術によって、ワクチン開発の際に「ミックス・アンド・マッチ」手法、つまりワクチンのRNA塩基配列を入れ替えたり組み合わせたりすることで、1つないし複数の病原体に対する有効性を高めることができるようになる。

モデルナ社が現在注力している分野の1つは、インフルエンザウイルスやRSウイルスなどの呼吸器ウイルスに対するmRNAワクチンだ。これらは深刻な感染症を引き起こし、経済的な負荷が大きい。インフルエンザによる経済的損失は、米国だけで年間112億ドル近くに上ると推計されている1。しかし、インフルエンザワクチンの有効性は、ワクチンがその地域で流行しているインフルエンザウイルスの型とどの程度一致しているかなどに左右され2、40~60%にとどまっている。「間違いなく改善の余地はあります」とMiller医師は話す。

モデルナ社は、COVID-19とインフルエンザの混合ワクチンの開発も進めている。この混合ワクチンは、年内に健常成人を対象とした臨床試験が行われる。

さらにモデルナ社は、COVID-19・インフルエンザ・RSウイルスの3種混合ワクチン、および新たな汎コロナウイルスワクチンを開発する新規プログラムにも着手している。「弊社は、さまざまな混合ワクチンの要素を開発しています。最終的には、呼吸器ウイルスが引き起こす可能性のある将来のパンデミックに対する備えを万全にすることになるでしょう」とMiller医師は説明する。

同社の目標は、多くの呼吸器ウイルスによる罹患率や死亡率を低下させることのできる、年1回接種の混合ワクチンを開発することだ。

リアルワールドエビデンスを活用する

COVID-19パンデミックの期間の間、リアルワールドエビデンスの収集に大きな変革があった。比較臨床試験の状況という枠を超えて、日常臨床の中で迅速かつ確実にデータを収集する革新的な方法によって、専門家たちはワクチンの安全性と有効性をリアルタイムで評価して、ブースター接種やワクチン種別変更の必要性について迅速な意思決定ができるようになった。

PAUL BURTON(ポール・バートン)モデルナ社最高医療責任者。

リアルワールドエビデンスによって、臨床試験の結果が裏付けられるとともに、ワクチンによる防御期間やワクチンの新興変異株に対する有効性が明らかになっている。「ブースター接種を実施するという2021年8月の米国政府の決定につながったデータの解析・発表・議論は、わずか半月ほどの間に行われました」とBurton医師は説明する。この事例は、臨床データが、保健衛生関連の政策と意思決定を具体化するスピードを明確に示している。

感染力の強いオミクロン変異株の感染が急拡大したときでさえも、mRNAワクチンとブースター接種が、COVID-19による入院・死亡リスクを低下させることが、リアルワールドエビデンスから示された。こうしたエビデンスからはまた、COVID-19のmRNAワクチンを接種した後の心筋炎のリスク3や、SARS-CoV-2変異株の感染による小児の入院など、比較的まれな事象に関する情報も得られている。こうしたデータは、公衆衛生当局がCOVID-19ワクチンのメリットとデメリット比較して検討する上で役立つ。

例えば、SARS-CoV-2とインフルエンザウイルスに共感染した患者の臨床転帰を調べた最近の研究では、両ウイルスへの共感染は、SARS-CoV-2への単独感染と比べて侵襲的な人工呼吸管理の実施や死亡のリスクの上昇と関連することが示された4。「このさき冬を迎えるときには呼吸器ウイルスに共感染する可能性が高くなるため、医療機関や政府は、こうした知見に支えられて、これまでは不可能だった方法で備えることができるようになるでしょう」とBurton医師は言う。

新たな懸念される変異株(VOC)のリスクや、ワクチンの効果の減弱のため、COVID-19が局地的流行に移行するかどうかは不確実性は残るが、Burton医師は楽観している。「実世界の厳密なエビデンスを透明性をもって広め、ワクチンの製造能力を増強することは、COVID-19パンデミックを局地流行期に移行させるだけでなく、新たなパンデミックに対する我々の備えを万全にする上で役立つのです」とBurton医師は話す。

上記に関する詳細及び「Understanding COVID-19 to prepare for the next pandemic(COVID-19を理解して次のパンデミックに備える)」への無料オンデマンドアクセスはこちら

アジア太平洋地域で花開くmRNAワクチン技術

モデルナ・ジャパン代表取締役の鈴木蘭美氏が、アジアでの事業拡大がその目標の達成に寄与しているのかについて解説する。

多くの国がウィズコロナ戦略をとり、これまでCOVID-19パンデミックに特徴的だった保健衛生上の制限を解除する中、世界保健機関(WHO)は、世界が回復するかどうかは世界人口の70%がワクチン接種を済ませるかどうかにかかっているとして警鐘を鳴らしている5

WHOは、免疫力低下と新たな変異株の出現が回復の妨げになる可能性についても警告している。モデルナ日本法人の代表取締役社長である鈴木蘭美氏は、「私たちは、警戒を解かず、最善を望み、最悪に備えることが必要です」と話す。彼女は、COVID-19ワクチンの世界的安定供給の確保が急務であることを強調する。

このためにモデルナ社は、世界各地の企業と、ワクチンや治療薬の大規模な製造を可能にする長期の戦略的協力関係を構築している。「弊社の目標はワクチンの生産を増やすことであり、とりわけ感染症の負荷が極めて大きい国や、高齢化が急速に進んでいる国での増産を目指しています」と鈴木氏は語る。

モデルナ社は、アジア太平洋地域で新たな系列会社を設立することにより、同地域でのワクチン生産を増やしてサプライチェーンの問題を緩和したいと考えている。

kokouu/E+/Getty

保健衛生上の課題を解決する

モデルナ社は、オーストラリア、韓国、日本で事業を展開してきた。香港、マレーシア、シンガポール、台湾で新たに法人を設立するという今回の発表は、同社のmRNAワクチンプラットフォームを活用して、アジア太平洋地域の保健衛生課題を解決するのに役立つだろう。

「信じられない道のりでした」と鈴木は振り返る。モデルナ社は、販売する商品を持たない比較的小さな米国企業だったが、わずかな年月で多国籍企業へと成長し、その日本法人は、2022年後半には日本国内で必要とされるCOVID-19クチン全体の50%近くを供給する見通しだという。

鈴木蘭美(すずき らみ)モデルナ・ジャパン社代表取締役社長。

鈴木氏は、自社の開発パイプラインに期待を寄せる。同社は現在、43の開発候補に関する開発中プログラムを46件抱えており、うち29は臨床試験を実施中だ。この中にはEBウイルス(第I相)やHIV(第I相)、サイトメガロウイルス(第III相)など、承認済みのワクチンが存在しないウイルスに対するワクチンも含まれる。モデルナ社の技術の応用は、個別化がんワクチン、心疾患、自己免疫疾患、希少遺伝性疾患のmRNA治療薬の開発にも及ぶ。

またモデルナ社は、アジアで積極的に人材を採用するかたわら、「mRNAアクセス」プログラムを立ち上げた。このプログラムは、世界各地の研究者が自らの研究室にいながら、モデルナ社のmRNAワクチンプラットフォームを使って新興感染症や顧みられない感染症に対するワクチンを開発できるようにするものだ。

「弊社は、WHOが指定した優先度の高い15種類の病原体に対するワクチンを2025年までに開発すること、そして次のアウトブレイクやパンデミックを抑えるための世界の備えを向上させることをお約束します」と鈴木氏は述べる。

参考文献

  1. Putri, W. C. W. S. Vaccine. 36, 3960–3966 (2018).
  2. https://www.cdc.gov/flu/vaccines-work/vaccineeffect.htm
  3. Oster M. E. et al. JAMA. 327, 331–340 (2022).
  4. Swets M.C. et al. Lancet. 399, 1463–1464 (2022).
  5. Strategy to Achieve Global Covid-19 Vaccination by mid-2022. World Health Organization (accessed 15th April 2022) https://cdn.who.int/media/docs/default-source/immunization/covid-19/strategy-to-achieve-global-covid-19-vaccination-by-mid-2022.pdf

原文:mRNA vaccines and treatments: beyond COVID-19

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