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オルガノイド研究の応用範囲を拡大する

細胞処理を効率化する新たな装置によって、ヒトオルガノイドを用いた薬剤スクリーニングや個別化医療に新たな可能性がもたらされる。

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ヤマハ発動機社の「CELL HANDLER(セルハンドラー)2」で単離し、撮像された肺上皮オルガノイド。

ヒトオルガノイドは、幹細胞から実験室で培養されたミニチュアの臓器様構造体であり、疾患メカニズムの理解や薬剤スクリーニングの精度の向上に寄与している。しかし、より複雑でリアルなオルガノイドを作製するには、時間と労力を要する。

このほど、日本の研究者とエンジニアのチームが、イメージングと細胞ピッキング技術を単一ワークフローに統合した、セルハンドリング装置「CELL HANDLER」を開発した。この装置は、オルガノイド研究を飛躍的に効率化し、研究者は培養液中から細胞を直接ピックアップして、アッセイプレートやウェルプレート(複数のウェルを備えた平らなプレートで、微量の液体を保持できる)に移すことができるようになる。

通常、培養細胞のサイズや形態の特徴はさまざまであるため、培養液中から必要な細胞を手作業で選別してプレートへと移す作業は時間がかかり、また困難である。

この課題を解決する目的で、静岡県に本社を置く機器メーカーであるヤマハ発動機株式会社が開発したCELL HANDLERは、プレート上の細胞を撮像し、表面積や細胞径、色調といった物理的特徴に基づいて細胞をソーティングする。

ワークフローの改善


CELL HANDLERの使用により、ユーザーは目的の細胞を特定して、8本の樹脂チップでピックアップし、アッセイプレートへと移動させることができると、ヤマハ発動機社新事業開発本部の首席研究員である原田額郎は説明する。

「ヤマハには新しいことに挑戦する企業文化があります。当社はもともと、微小な電子部品を正確に扱うロボットを手掛けており、その技術をセルハンドリングに応用したのです」と原田は付け加える。

CELL HANDLERの最大の利点は、アッセイプレートの均一化を実現してデータのばらつきを抑え、さらにワークフロー全体の所要時間も短縮できることだ。

「手作業で行う過程を例にとると、種々の細胞撮像図を取得して数百のウェルプレートへと精確に細胞を移動させるまで、半日以上はかかります。しかし、CELL HANDLERを使用すれば、この過程を30分に短縮できます」と原田は説明する。

スケールアップ

ヤマハ発動機社の技術者がセルハンドラーを操作している様子。Credit: Yamaha Motor

京都市を拠点とする生命科学系スタートアップ企業のHiLung株式会社は、CELL HANDLERにより、薬物スクリーニング候補や疾患モデリング用の肺オルガノイドモデルの作製の最適化と自動化が可能になった。

同社の共同創設者・代表取締役の山本佑樹は、オルガノイドの生産をスケールアップすることは非常に困難だと言う。「ハイスループットスクリーニング用のウェルプレートを手作業で準備するのは、時間がかかる上に精度も低いため、現実的ではありません」と説明する。

HiLung社は、治療薬候補の予測と選択に用いるヒト呼吸器上皮細胞の大量生産と培養を行っている。

山本は、創薬ではウェルごとのばらつきや個人差がネックになっていると指摘する。

「CELL HANDLERの精度の高さに驚きました。マイクロメートルサイズのオルガノイドを正確にピックアップし、創薬アッセイやハイスループットスクリーニング用のプレートへと移動することができるのです。CELL HANDLERは、オルガノイド培養のスケールアップに大きく貢献しています」と山本は続ける。

個別化医療


個別化医療は、オルガノイド研究の重要な目標であり、HiLung社の研究目標の1つは、嚢胞性繊維症の個々の患者に適した薬剤の組み合わせを開発することである。

HiLung社の共同創設者・取締役で、横浜市を拠点とする永元哲治は、ヤマハ発動機社の装置の一貫性とハイスループットが、個別化評価において不可欠だと語る。

「個別化のためには、それぞれの患者に対する試験だけでなく、試験のための治療法候補のプールを拡大する必要があります。CELL HANDLERの高い精度とハイスループットは他にはない特徴であり、我々の研究を支えてくれています」。

CELL HANDLERは、人間の生物学的特性をより忠実に模倣するために作製された、非常に複雑なオルガノイドモデルを取り扱うこともできる。

「異なるタイプのオルガノイドを同一ウェル内に配置する作業を、ウェルプレート内のすべてのマイクロウェルで行うことを想像してみてください。手作業では到底不可能ですが、CELL HANDLERはこうした作業で真価を発揮します」と原田は説明する。

ヤマハ発動機社は、オランダのバイオテクノロジー企業Hub Organoids社とも協力しており、CELL HANDLERを用いた個別化医療向けの薬物スクリーニングプラットフォームの開発を進めている。

薬物スクリーニング

培養液から細胞やオルガノイドを移動させる作業は、時間を要することがある。Credit: Prapass Pulsub/Moment/Getty

ユトレヒトを拠点とするHub Organoids社の最高科学責任者Sylvia Boj(シルビア・ボイ)は、CELL HANDLERによって、スクリーニング用ウェルプレート内の個々のオルガノイドの正確な移動とモニタリングが可能になり、オルガノイドを用いた新たなアッセイの開発が促進されると話す。

「このシステムにより、少数のオルガノイドで実施したスクリーニングアッセイでも、最大25倍のオルガノイドを使用した場合と同等の結果を得ることができます。また、特定の実験条件下から単一のオルガノイドを回収することができるため、遺伝子編集用や薬剤耐性試験用のオルガノイドの生成効率が向上します」。

ボイは、CELL HANDLERは特に薬物スクリーニングにおいて多くの利点をもたらすと話す。オルガノイドをスクリーニング用ウェルプレートに正確に移動できるため、各ウェル内のオルガノイドのサンプル数を減らしつつ、実験当たりの試験条件数を増やすことが可能になるからだ。

「このことは、探索段階や前臨床段階において、ヒット化合物候補やリード化合物候補を特定する上で極めて有効です」とボイは説明する。

Hub Organoids社が考えるもう1つの利点は、この装置が臨床研究におけるオルガノイドの活用を大幅に拡大することだと、ボイは付け加える。

「患者の生体検査では、通常、得られる組織の量が非常に少ないために、オルガノイド培養を成功させるプレッシャーが研究チームに掛かることが課題です。その後、薬物スクリーニングに必要な量を確保するためにこの培養を実験室で増やす必要があり、非常に時間がかかります」。

複数の利点


CELL HANDLERを使うことで、標準的な治療用化合物のスクリーニングに必要なオルガノイド数を大幅に削減し、短時間で作製できるようになった。「これにより、臨床での患者の反応と関連付けられる再現性の高いオルガノイドデータを迅速に取得できます」とボイは述べる。

原田は、CELL HANDLERの主な利点の1つは、蛍光や形態学的なパラメーターなど、細胞をソーティングするための幅広い方法に対応している点だと指摘する。また、さまざまな種類の培養液から細胞をピックアップして移動できることも強みだという。

「創薬研究は、必然的に再現性とスケールアップの課題に直面します。CELL HANDLERは、これらの課題を解決し、薬物スクリーニングと個別化医療の信頼性を高める手段です」。

原文:Expanding the reach of organoid research

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