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がん:エンハンサー依存性前立腺がんにおけるSWI/SNF ATPアーゼの標的化

Nature 601, 7893 doi: 10.1038/s41586-021-04246-z

SWI/SNF(switch/sucrose non-fermentable)複合体は、クロマチンリモデリングに重要な役割を担っており、20%以上のがんで変異が見られる。今回我々は、SWI/SNF ATPアーゼサブユニットであるSMARCA2とSMARCA4に対するPROTAC(proteolysis-targeting chimera)分解剤を開発し、AU-15330と命名した。アンドロゲン受容体(AR)+ FOXA1(forkhead box A1)+の前立腺がん細胞は、正常細胞株や他のがん細胞株に比べて、SMARCA2とSMARCA4の二重分解に対する感受性は著しく高かった。SWI/SNF ATPアーゼを分解すると、前立腺がん細胞の増殖を促進する転写因子(つまりAR、FOXA1、ERGおよびMYC)が結合したシス調節エレメントが急速に凝縮され、それらの転写因子がクロマチンから取り除かれて、コアエンハンサー回路が障害され、下流のがん遺伝子プログラムが働かなくなった。SWI/SNF ATPアーゼの分解はまた、ARFOXA1MYCがん遺伝子自体の超生理的発現を結び付けているスーパーエンハンサーとプロモーターループの相互作用も障害した。AU-15330は、前立腺がんの異種移植片モデルで腫瘍増殖の強力な抑制を誘導し、ARアンタゴニストのエンザルタミドと相乗的に働いて、去勢抵抗性前立腺がん(CRPC)モデルで毒性を示すことなく疾病の寛解を誘導しさえする。従って、SWI/SNFを介したエンハンサー接近性の阻害は、エンハンサー依存性がんの有望な治療手法となる。

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