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神経科学:レチノイン酸による前頭前野のパターン形成と神経結合形成の調節

Nature 598, 7881 doi: 10.1038/s41586-021-03953-x

前頭前野(PFC)とその視床背内側核との結合は、認知の柔軟性や作業記憶に重要であり、自閉症や統合失調症などの障害で変化していると考えられている。齧歯類では、大脳皮質の領域的パターン形成を支配する発達機構が明らかになっているが、霊長類で、PFC–視床背内側核間結合の発達や、顆粒細胞からなる明瞭な第4層を伴うPFCの側方拡張の基盤となる機構は解明されていない。今回我々は、神経の発達と機能を調節するシグナル伝達分子であるレチノイン酸の、前方(前頭部)から後方(側頭部)に向かいPFCで増加する勾配の存在を報告し、ヒトおよびアカゲザルの新皮質で、胎児や胎仔の発生の初期および中期にレチノイン酸によって制御される遺伝子群を明らかにする。霊長類では、マウスに比べてレチノイン酸合成酵素が特異的に発現して皮質中で広がっていることなど、レチノイン酸源の候補が複数観察された。また、レチノイン酸シグナル伝達はレチノイン酸異化酵素であるCYP26B1によるPFC予定域におおむね限局していた。CYP26B1は、運動皮質予定域で発現上昇している。マウスでの遺伝子欠失実験で、レチノイン酸受容体のRXRGとRARBを介したレチノイン酸シグナル伝達とCYP26B1依存的異化作用が、前頭前野および運動野の正しい分子パターン形成やPFC–視床背内側核結合の発達、PFC内部での樹状突起スパイン形成、皮質第4層マーカーRORBの発現に関与していることが明らかになった。まとめるとこれらの知見から、レチノイン酸シグナル伝達が、PFCの発達と、おそらく進化に伴うPFCの拡大に重要な役割を持っていることが分かった。

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