Article

神経科学:CBLN2のヒト族特異的な調節が前頭前野のスパイン形成を増加させる

Nature 598, 7881 doi: 10.1038/s41586-021-03952-y

さまざまな動物種の神経系の間の類似と相違は、発生的な制約と特異的な適応に起因する。高次認知機能や複雑な社会的行動に関わる大脳皮質領域である前頭前野(PFC)の比較解析から、真にヒト特異的、あるいはヒト特異的である可能性のある構造的・分子的特殊化が明らかにされており、例えば、肥大したPFCで増加した樹状突起スパイン密度の前後勾配などが知られている。これらの変化は、おそらく時空間的な遺伝子調節の相違によって仲介され、この相違はヒトの胎児中期の大脳皮質で特に顕著である。今回我々は、ヒトとアカゲザルのトランスクリプトームデータを解析し、シナプス形成開始と同時期である胎児や胎仔の発生中期に、ニューレキシン(NRXN)とグルタミン酸受容体δ(GRID/GluD)が関連するシナプスオーガナイザーであるセレベリン2(CBLN2)の、一過的にPFCで増加する層特異的な発現上昇が見られることを明らかにした。さらに、CBLN2の発現レベルや層分布の種間の差は、少なくとも部分的には、レチノイン酸応答性CBLN2エンハンサー内のSOX5結合部位を含むヒト族特異的な欠失によることが分かった。マウスのCbln2エンハンサーをin situで遺伝的にヒト化すると、Cbln2発現の増加や異所的な層での発現が促され、PFCの樹状突起スパイン形成が亢進した。これらの知見は、大脳皮質の前後勾配やヒト族のPFCの樹状突起スパインの不均衡な増加の遺伝的・分子的基盤、およびNRXN–GRID–CBLN2複合体の機能不全と神経精神疾患の病因とを結び付ける可能性のある発生の機構を示唆している。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度