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進化学:ウォーレシアで見つかった中期完新世の狩猟採集民のゲノム

Nature 596, 7873 doi: 10.1038/s41586-021-03823-6

東南アジアでは考古学的記録が乏しく、熱帯気候が古代人DNAの保存に適さないため、この地域における初期現生人類の集団史には未解明の部分が多い。これまでに、この地域で見つかり塩基配列が解読された新石器時代以前のヒトゲノムは、低カバー率のものが2例あるのみである。これらはいずれも大陸のホアビン文化狩猟採集民の遺跡で見つかったもので、1つはラオスのPha Faen遺跡(年代は1950年を基点とする較正年代で7939~7751年前)、もう1つはマレーシアのグアチャ遺跡(同4400~4200年前)に由来する。本論文では、我々の知る限り初めての、ウォーレシアの古代人ゲノムについて報告する。ウォーレシアは、スンダ大陸棚(大陸東南アジアおよびインドネシア西部の大陸島からなる)と更新世のサフル大陸(オーストラリアおよびニューギニア)の間にある海洋島地域である。我々は、インドネシア・南スラウェシ州のLeang Panninge鍾乳洞で7300~7200年前(較正年代)に埋葬された、狩猟採集民の若い女性の錐体骨からDNAを抽出した。遺伝子解析の結果、「Toalean」技術複合と関連付けられているこの新石器時代以前の狩猟採集民は、現代のパプア人集団やオーストラリア先住民集団と大半の遺伝的浮動および形態的類似性を共有しているものの、約3万7000年前にこれらの集団間で分岐が起きた頃に枝分かれした、これまで知られていなかった分岐系統を代表することが明らかになった。我々はさらに、このLeang Panningeゲノムに認められる、デニソワ人祖先や古いアジア人関連の祖先の痕跡について説明し、現在この地域ではこの系統が大規模に置き換えられていると推測する。

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