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免疫学:肝細胞がんに対する免疫療法においてNASHは抗腫瘍免疫監視機構を制限する

Nature 592, 7854 doi: 10.1038/s41586-021-03362-0

肝細胞がん(HCC)の病因にはウイルス性と非ウイルス性の2つがある。非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)はHCCの重要な駆動要因である。HCCの治療に免疫療法が承認されているが、最適な治療効果を得るために、バイオマーカーを用いて患者を層別化するというニーズは満たされていない。今回我々は、NASHに侵された肝臓では、従来とは異なる活性化状態の疲弊したCD8+PD1+ T細胞が徐々に蓄積することを報告する。NASH誘発性HCCの前臨床モデルでは、PD1(programmed death-1)を標的とした治療目的の免疫療法により、腫瘍内の活性化CD8+PD1+ T細胞が増殖したが、腫瘍の退縮にはつながらなかった。これは、腫瘍の免疫監視機構が障害されたことを示している。予防的に抗PD-1抗体を投与したところ、NASH–HCCの発生率の上昇と腫瘍結節の数とサイズの増加が起こり、これらは肝臓のCXCR6+、TOX+、TNF+であるCD8+PD1+ T細胞の増加と相関していた。抗PD1抗体投与によってHCCで引き起こされるこのような増加は、CD8+ T細胞の除去やTNFの中和によって防止されたため、CD8+ T細胞は、免疫監視の活性化や実行ではなく、NASH–HCCの誘導を促すことが示唆された。同様の表現型プロファイルと機能プロファイルが、ヒトに由来するNAFLDあるいはNASHの肝臓のCD8+PD1+ T細胞でも見られた。1600人以上の進行HCC患者で、PDL1(programmed death-ligand1)あるいはPD1阻害剤の有効性を検討した3つの無作為化比較第III相臨床試験のメタ解析から、免疫療法は非ウイルス性HCCの患者の生存期間を有意には改善しないことが明らかになった。さらに2つの検証コホートでは、NASH誘発性HCCで抗PD1抗体あるいは抗PDL1抗体治療を受けた患者は、他の病因の患者より全生存期間の短縮を示した。総合的にこれらのデータは、非ウイルス性HCC、特にNASH–HCCは免疫療法に対する反応性が低い可能性があり、これはおそらくNASH関連の異常なT細胞活性化が非がん部肝組織損傷を引き起こし、免疫監視機構の障害につながるためであることを示している。我々のデータは、一次治療あるいは補助療法としての免疫療法研究において、背景肝病変によるHCC患者の層別化を行うための理論的根拠を示している。

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