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植物生物学:倍数体のバイオエネルギー作物であるスイッチグラスにおける気候適応のゲノム機構

Nature 590, 7846 doi: 10.1038/s41586-020-03127-1

長期的な気候変動と周期的に起こる極端な環境事象によって、食料や燃料の安全保障、ならびに世界の作物生産力が脅かされている。分子育種や適応育種の戦略は気候ストレスの影響の緩和や作物の復元力の向上を可能にするが、それらの手法には生産力や適応の根底にある遺伝子の十分な知識が必要であり、そうした知識はよく研究された少数のモデル系に限られてきた。本論文では、倍数体のバイオエネルギー作物であるスイッチグラス(Panicum virgatum)の大型で複雑なゲノムについて、アセンブリと注釈付けを行った結果を提示する。1800 kmの緯度範囲に存在する一般的な園地10か所で栽培した732種類の遺伝子型について、塩基配列を再解読し、それらの生物量および生存について分析した結果を総合したところ、気候適応を示す数々のゲノム証拠が明らかになった。気候と遺伝子と生物量の関連性は、豊富に見られたが、深く分岐した遺伝子プールの間で大きく異なっていた。さらに、前適応した北方の遺伝子プールからの対立遺伝子の移入を介して、遺伝子流動が後氷期の北方地域への定着時に気候適応を加速させたことが明らかになった。優位でないサブゲノムにおいて遺伝性の遺伝子多様性が高レベルであることに示されるように、スイッチグラスの倍数体としての性質もまた、遺伝子機能の分割によって適応能を増強したと考えられる。今回得られたゲノム情報資源および遺伝子と形質の関連性は、気候適応のパターンを調べるのみならず、育種家に対して、持続可能なバイオエネルギー生産のためのスイッチグラス増産に必要なツールを提供するものである。

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