Perspective

ウイルス学:独特なウイルス保有宿主であるコウモリの宿主防御から得られる教訓

Nature 589, 7842 doi: 10.1038/s41586-020-03128-0

ヘンドラウイルス感染症、ニパウイルス感染症、マールブルグウイルス感染症、エボラウイルス感染症、重症急性呼吸器症候群(SARS)、中東呼吸器症候群(MERS)など、新興ウイルス感染症の大規模なアウトブレイク(集団発生)がこれまでに複数回起きており、現在は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)が発生している。注目すべきことに、これらのアウトブレイクは全て、コウモリ由来のウイルスの人獣共通伝播の疑いと結び付けられている。唯一の飛行性哺乳類であるコウモリは、他にも、体サイズの割に長い寿命、低い腫瘍形成率、臨床症状を伴わずにウイルス宿主となる並外れた能力など、哺乳類としては独特な特徴をいくつも示す。本論文では、コウモリの宿主防御システムや免疫寛容を支える機構、およびコウモリがヒトの健康や疾患に及ぼす影響について議論する。最近の研究から、コウモリの宿主防御システムは、6400万年に及ぶ適応進化によって防御と寛容のバランスを取るように形作られ、その結果、ウイルスにとって理想的な保有宿主の役割を果たす独特な能力が生じたことが示唆された。コウモリの効果的な宿主防御から得られる教訓は、ウイルスの進化をより深く理解し、今後のウイルスの異種間伝播の予測、防止、制御を改善するのに役立つだろう。コウモリにおける免疫寛容の機構の研究は、ヒトの健康を改善するための新しい手法につながる可能性がある。我々は、コウモリと人類の両者の利益のために、研究においてコウモリに焦点を合わせる時が来たと確信している。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度